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 国民への説明や歴史に対する責任をどう考えているのか。納得できない政府の対応だ。

 天皇陛下の退位の日程などについて、皇族や三権の長らが意見をかわした皇室会議の「議事概要」が公表された。会議は今月1日に非公開で約1時間15分にわたって開かれ、議員10人の全員が発言したという。

 だが、明らかになった議員の発言は「天皇陛下には1月7日の御在位満30年の節目をお迎えいただきたいこと、国民生活への影響等を考慮すること、静かな環境の中で国民が天皇陛下の御退位と皇太子殿下の御即位をこぞって寿(ことほ)ぐにふさわしい日とすることなどの意見の表明が行われた」。これで全てだ。

 退位は約200年ぶり、日本国憲法下で初めてという、歴史に刻まれる出来事である。

 どんな道筋を経て退位に至ったのか、国民が正しく認識し、後世の人々もしっかり跡をたどれるようにする。公文書管理法を持ちだすまでもなく、政府の当然の責務なのに、あまりにお粗末な内容ではないか。

 退位特例法は、退位の日を決めるにあたって「首相はあらかじめ、皇室会議の意見を聴かなければならない」と定めている。退位が天皇の恣意(しい)や政権の都合で行われないようにするために設けられた条文だ。

 「再来年4月末に退位」という政府の方針が事前に伝わるなか、会議では、衆院の赤松広隆副議長が来年末の退位を支持する意見を述べたという。

 国民生活への影響をなるべく小さくすることを考えれば、検討されてしかるべき案だ。これに対しどんな意見が出たのか、政府はどう応じ、いかなる経緯で4月退位でまとまったのか、概要には記載が一切ない。そして、これ以外に記録は残さないという。あきれるばかりだ。

 危うさを感じるのは、退位と即位は「国民がこぞってお祝いすべき」だから、個々の意見を明らかにするのは「好ましいことではない」と皇室会議で合意した、という政府の説明だ。

 異見があることを「好ましくない」と決めつける姿勢は、今後の代替わりの儀式や皇室のあり方についても、声をあげにくい風潮を容易につくり出す。昭和の幕が下りた時には、自粛ムードや天皇制への疑義を許さない空気が広がり、息苦しさが世の中を覆った。

 皇室は国民の理解と支持の上に存立することを忘れてはならない。退位問題で高まった関心を大切にしながら、情報を共有し、議論をおこし、深める。それが政府の本来の役割である。

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