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 厚生労働省が生活保護費の引き下げを検討している。一般の低所得世帯の生活費と比べて、都市部などで保護世帯の受給額の方が多いという検証結果が出たためだ。子どものいる世帯や高齢者世帯が影響を受ける。

 しかし、いまの支給額でも生活は苦しいという声が少なくない。保護費の水準を決める仕組みに問題があるとの指摘もある。引き下げは再考し、制度の点検と見直しを急ぐべきだ。

 生活保護費のうち、生活費にあたる「生活扶助費」の改定では、30年ほど前から一般世帯の消費実態とのバランスをみる方式になった。5年ごとの全国消費実態調査を用いて一般低所得世帯と比べる今のやり方になったのは07年の検証からだ。

 だが、検証結果はあくまで政策判断の材料で、そのまま反映してきたわけではない。生活保護予算を減らしたのは03年度と04年度、13~15年度だけだ。このうち大幅減額は3年かけて6・5%減とした13~15年度のみで、自民党が生活保護費の削減を選挙公約に掲げたことによるものだった。

 生活保護の基準は、経済的に苦しい家庭の子どもへの就学援助や、介護保険料の減免、税制、最低賃金の水準など国民生活に広く関わる。安倍政権は、家庭が貧しくても大学に進学できるよう授業料の減免や給付型奨学金の拡充を打ち出したばかりだ。最低賃金引き上げなど暮らしの底上げも掲げてきた。保護費の引き下げはこれらの政策と矛盾する。

 そもそも、今回の検証結果の詳細なデータが厚労省の審議会に示されたのは今月上旬だ。来年度予算案の決定が迫っており、委員からは「十分な検討ができない」と不満が漏れた。審議会の報告書には「検証結果を機械的に当てはめないよう、強く求める」と明記された。

 いまの検証の方法に対しても、「一般低所得世帯との均衡のみで捉えていると、絶対的な水準を割ってしまいかねない」「子どもの健全育成のための費用が確保されない恐れがある」などの懸念が出された。報告書には「検証方法には一定の限界がある」「これ以上、下回ってはならないという水準の設定についても考える必要がある」などの留意事項が盛り込まれた。

 仕組み自体に限界があるという指摘は、4年前の前回の報告書にもあった。最低生活保障のあり方をきちんと議論してこなかったのは政府の怠慢だ。

 堅持すべきラインはどこなのか。時代にあった生活保護の姿を早急に議論するべきだ。

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