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 東京都の市場移転問題が大きな節目を迎えた。80年以上の歴史がある築地を来年10月6日で閉じ、11日から豊洲が動き出すことが正式に決まった。

 小池百合子知事の移転延期表明から1年4カ月。「大騒ぎした揚げ句、元のさやに収まっただけ」との批判は強い。

 ただし延期後に、豊洲市場の地下にあるはずの盛り土がないことがわかったり、環境基準を超える有害物質が検出されたりしたのも事実だ。移転先が豊洲に決まるまでの不明朗な経緯にも、改めて光が当たった。

 小池氏が「移転についてはいったん立ち止まって考える」と公約し当選したこともあわせ考えると、一定の時間がかかったこと自体はやむを得なかった。

 「小池流」の問題は別の点にある。

 外部のブレーンを重用して都庁職員との間に溝をつくり、独断で場当たり的といえる対応を重ねた。小池氏は従来の都政の意思決定過程を「ブラックボックス」と糾弾したが、社説で何度も指摘したように、小池都政も同じ評価を免れない。

 ことし夏の都議選直前に突然打ち出した「築地は守る、豊洲を活(い)かす」のキャッチフレーズは、その最たるものだ。

 二つの市場が並立するイメージを打ち出したが、内実を伴うものではないことがほどなく明らかになる。築地の跡地を食のテーマパークとする構想は、最近になって「一つの考え方」に後退。築地ブランドへの言及は影を潜め、先日の記者会見で小池氏は「新たな豊洲ブランドを構築していきたい」と語った。

 いったい何を信じればいいのか。ふりまわされる側はたまったものではない。市場関係者の間に混迷と分断をもたらし、豊洲に進出する予定だった商業施設は撤退を検討している。

 東京五輪に間に合うように築地周辺を整備しなければならない事情に迫られ、広げた風呂敷を、なかの品物を散らかしたまま、とにかく包み直した。今はそんな状態ではないか。

 移転延期で業者への補償も生じ、豊洲市場の経営はさらに厳しさを増すことにもなった。

 これ以上の迷走は許されない。そのためには豊洲の安全を約束する追加対策工事を着実に行うことが必要だ。あわせて、市場にかかわる人々や地元自治体に真摯(しんし)な説明を重ね、意見を聴き、壊れてしまった信頼関係を築き直すことが欠かせない。

 先の会見で小池氏は「丁寧な対応を心がけてきたつもり」と述べた。まずこの認識から改めなければ、展望は開けない。

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