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 参加するのなら、日本として何をめざすのかを明確にし、戦略をもって臨む必要がある。

 米トランプ政権がかかげる有人月探査計画に、政府が参加する方針を決めた。2020年代後半に月の軌道上に中継基地を造り、人を送りこむ構想だ。日本も参加している国際宇宙ステーション(ISS)は24年に運用を終える予定で、その後継プロジェクトとなる。

 ロシアはすでに協力する方針を決めている。中国や欧州は独自の月探査計画を持つ。

 だが他国の事情がどうあれ、拙速に事を進めるのは禁物だ。

 米国は予算難などから月探査構想を中止した過去をもつ。今回、日本に最大限の貢献を求めてくると予想され、それが米国の単なる「お手伝い」であっては国民の理解は得られまい。

 ISSで日本は、無人補給船「こうのとり」による物資輸送や、実験棟「きぼう」の建設・運営を通じて高い技術力を示してきた。世界で初めて小惑星から試料を持ち帰った探査機「はやぶさ」の実績もある。こうした強みを生かし、存在感のある参加の道を考えたい。

 日本人飛行士の将来についても検討しなくてはならない。

 今月19日からISSで長期滞在を始めた金井宣茂(のりしげ)さんは、08年度募集で選ばれた3人の飛行士の最後の一人だ。今後、新たな登用は予定されていない。

 日本人による月着陸をめざすことになれば、ISSに毎年投じてきた約400億円を大きく超える費用が見込まれる。そこまでして自国の飛行士にこだわる必要はないと考えるか。それとも、相応の負担を覚悟したうえで、宇宙飛行のノウハウを次代に引き継ぐ道を選ぶか。幅広い議論が求められる。

 米グーグル社がスポンサーとなる初の民間月面探査レースには、日本のベンチャー企業も加わる。今後の宇宙開発に関しては、こうした新興勢力をいかに取り込み、育てていくかという視点が欠かせない。米国では、ISSへの物資輸送を委託された新興企業がロケットなどを独自に開発し、成長した。

 関心を示すアジアの国との連携も必要だろう。ベトナムやフィリピンと共同開発した超小型衛星を「きぼう」からそれぞれ放出・運用した実績はあるが、十分とはいえない。

 宇宙開発は軍事や安全保障と密接に関連する。この冷厳な事実抜きに語ることはできない。一方で、国際協調を促し、国民に夢を与える手段やシンボルにもなる。その認識の下、賢明な活用を探ることが不可欠だ。

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