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 広島、長崎で被爆して病気になったのに、切り捨てるような態度をいつまで続けるのか。原爆症の認定で、被爆者が裁判で争わざるを得ない状況に、国は終止符を打つべきだ。

 加藤勝信・厚生労働相は、今月開かれた日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)との定期協議で、認定制度の抜本的な見直しを求める被団協側の要請を、「難しい」と拒んだ。

 かたくなな国の姿勢に、被爆者たちが失望したのも当然だ。定期協議は09年、日本被団協と麻生太郎首相(当時)が結んだ確認書に基づき、開かれている。「今後、訴訟の場で争う必要のないよう、解決を図る」と合意した。国は被爆者との約束に立ち返るべきだ。

 被爆者健康手帳を交付された人は全国に約16万人。放射線を浴びたために治療が必要な病気にかかった場合は、原爆症に認定され、医療特別手当が国から支給される。だが、審査は厳しく、認定者は当初、手帳を持つ人の1%にも満たなかった。

 数百人の被爆者が原爆症の認定を求める訴えを相次いで起こし、約9割の人が勝訴した。爆心地からの距離などをもとにした推定の被曝(ひばく)線量で原爆症かどうか線引きをする国の審査方針を、各地の裁判所が「放射線と病気の関係が否定できなければ認めるべきだ」と批判した。

 国は08年、被爆者らが、がんや白血病などになった場合は積極認定するよう、基準を緩和した。13年にも対象疾病を広げたが、それでも申請を却下される人が後を絶たず、各地でなお訴訟が続いている。

 大きな問題は、被曝線量を認定の際に重視する姿勢を、国が一貫して変えないことだ。

 放射線の影響は未解明な部分が多い。被爆者は生涯、心身の後遺症に苦しみ、いつ発病するか、不安を強いられる。被爆者援護法はこうした健康被害に「国の責任で援護対策を講じる」と記している。この精神に沿い、幅広く救済すべきだ。

 日本被団協は、手帳を持つすべての人に「被爆者手当」を支給することを提案する。疾病ごとに額に差をつけ、一部は減額になることも受け入れる内容だ。当事者からの提案を国は前向きに議論してはどうか。

 被爆者の平均年齢は81歳を超えた。毎年約1万人の被爆者が亡くなり、提訴しても判決を聞けずに亡くなる人もいる。

 安倍首相は折に触れて「被爆者の方々に寄り添いながら援護施策を着実に推進したい」と述べてきた。被爆者たちはその実行を待ち望んでいる。

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