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 中学生・高校生が心に響いたことばとそのエピソードをつづる「私の折々のことばコンテスト2017」(朝日新聞社主催、朝日中高生新聞共催、Z会、栄光ゼミナール特別協賛)の審査結果を発表します。哲学者、鷲田清一さんが朝刊1面に連載しているコラム「折々のことば」にならった作文で、3回目の今回は最多の3万1588点の応募がありました。

 ■最優秀賞 遠山桃々乃(ももの)さん(熊本県立菊池農業高3年)

 あんたの根っこ見つけて水やり続けるねん

 (中学校の管理作業員さん)

     ◇

 「熊本へ行って農業を学びたい」。大阪の大都会で生まれ育った私が熊本の農業高校への進学を決めた時、担任の先生を始め、多くの先生に「向いていない」「やめておけ」と反対されました。そんななか、3年間一緒に花の世話をしていた管理作業員さんだけが私を応援してくれました。「あんたの根っこ見つけて、水やり続けるねん。自分の根は自分にしかわからへんねや」と言って頂き「やっぱり私は農業を学び、それを水として大きく育ちたい!」と強く思えるようになりました。

 今、私は全力で農業を学び、夢を見つけ充実した日々を送っています。毎日私の根っこに水をやり、育ち、立派に実って農業から社会に貢献できる人になります。

 ■夢めざし、つらい時支えてくれた

 1年生の時には、ひなから育てたニワトリをしめて解体することができなかった。帝王切開で生まれ、立てない子牛の脚を支えながら哺乳した。犬の出産では大半が死産。クラスで飼育した豚は出荷後、買い戻してバーベキューでおいしく食べた。

 畜産科学科の3年間を「動物と向き合う生活を送れて充実していた」とにこやかに振り返った。

 動物が好きで、中学2年の時、農業高校の畜産科を紹介するテレビ番組を見て志望を決めた。両親も先生も「朝が早くてついていけない」と反対。負けず嫌いで朝4時の起床を続け、大丈夫だとアピールした。そんな時に出会った「ことば」だった。

 高校生活が楽しくて、コンテストで作文を書くまで忘れていた。ことばをかけてくれた男性職員は取材に「そんなことゆうたかな」と覚えていなかったが、「目標に向かって水をやり続けてほしい」と話した。

 遠山さんは「お互い忘れていたなんて」と笑い、「それでも、一番つらい時に支えてくれた大事なことばです」という。「大学に進み、ニワトリの遺伝子育種学を学び、滅んだ在来種を復元する研究をしたい」

 【中学部門】

 ■鷲田清一賞

 もういっかい、ちっちゃくならへんかな~?

 (母)

     ◇

 夏休み明け、グッと背が伸びた私の頭を押さえて「だってさみしいやん」と笑う母。私も、もういっかいちっちゃくなりたいな。

 (大阪 関西創価中1年 吉瀬茉城〈よしせましろ〉さん)

 ■大岡信ことば館賞

 ごらんになって

 (幼稚園の園長先生)

     ◇

 空にかかった虹を、「見て」ではなく「ごらんになって」と指した園長先生。美しい言葉が、虹をよりいっそう美しく感じさせたのだと思う。

 (大阪教育大付属平野中3年 宮原加奈子さん)

 ■朝日新聞社賞

 大きく日々、輝け、そして器の大きい人となれ。

 (父)

     ◇

 ソフトボールの全国大会に向かう朝、机に置かれた父からの手紙。僕の名前の由来だ。手紙とメダルは今も大切にしまっている。

 (広島市立大州中2年 出口大暉〈たいき〉さん)

 ■Z会賞

 低い目標は、自分の限界を決めてしまい、それ以上上がれない。高い目標を持って目指そうと努力することによって、はじめて人は成長する。

 (父)

     ◇

 考査前、私の目標点数を見て。心の内を見透かされた気がした。

 (仙台市立仙台青陵中等教育3年 菅野怜実〈れみ〉さん)

 ■栄光ゼミナール賞

 美しい服は、裏地も美しい。

 (祖母)

     ◇

 決勝に進めなかったピアノコンクールで思い出した、洋裁師の祖母の言葉。心動かす演奏の裏にあるのは、自分をごまかさない努力。私も美しい裏地を編もう。

 (埼玉 浦和明の星女子中2年 久保田舞香さん)

 ■朝日中高生新聞賞

 一緒に宇宙に行こう

 (油井亀美也宇宙飛行士)

     ◇

 講演会の質疑で憧れの油井さんが言ってくれた。これを支えに夢に向かい努力する。たった一言で誰かを応援できる宇宙飛行士になりたい。油井さんと宇宙に行く。

 (大阪市立鯰江中1年 寺尾惺来〈せいら〉さん)

 【高校部門】

 ■鷲田清一賞

 祈っているからね

 (母)

     ◇

 寮にいる僕に電話で母が言う。大げさだと思っていたけれど、今は耳になじんで温かい。誰かを思い思われることで、僕たちは人生を少し多く生きているのかも。

 (鹿児島 ラ・サール高1年 森優斗さん)

 ■大岡信ことば館賞

 今日もよく食べました。

 (私の母)

     ◇

 「お母さん、今日も全部食べられたよ」。一時期学校に行かなかった私。母のお弁当が食べたくて登校するうちにつらくなくなった。私もいつか子供に言おう。

 (東京 和光高2年 山田采弥〈あやね〉さん)

 ■朝日新聞社賞

 みすずが施設におるってことは、親がみすずに生きてほしいって思ったけんやけんね。

 (施設の先生)

     ◇

 ふつうの家庭に憧れ、なぜ自分は施設にいるのかと悩んでいた心が軽くなり、少し親を好きになれた。この言葉は私のお守り。

 (福岡県立三池高1年 三隅美涼〈みすみみすず〉さん)

 ■Z会賞

 深呼吸一つで、緊張を興奮に変えてゆけ

 (小学生の頃、習っていた少林寺拳法の先生)

     ◇

 昇級試験本番、目いっぱい息を吸って吐いた。合格証書が届いた。この言葉はずっと僕の口癖。

 (智弁学園和歌山高1年 行〈ゆき〉正太郎さん)

 ■栄光ゼミナール賞

 プラスはマイナスから書き始める

 (友達)

     ◇

 いつか実を結ぶという意味と、一本書き加える努力が大切という意味。声をかけてくれた友達のように、同じ言葉でも良い解釈を人に伝えられるようになりたい。

 (大阪桐蔭高2年 藤川なぎささん)

 ■朝日中高生新聞賞

 「これでいい」じゃなくて「これがいい」にしなさい

 (母)

     ◇

 自分の選択の結果は誰にも責任転嫁できないけれど、「これが」を選び続けていこう。本当に大切なものが見えてくるはずだから。

 (大阪 大商学園高2年 井川栞〈しおり〉さん)

 ■「大丈夫、できる」ぼく自身に向けて 「語録」から多数の応募作・松岡修造さん

 「苦しいときこそ笑え」「今日から君は噴水だ」。熱い「修造語録」で知られるプロテニスプレーヤーの松岡修造さんのことばに共感が集まった。応募作のうち、有名人のことばを選んだなかで、松岡さんは第1回から2年連続で1位。今回は3位ながら、存命している人物の中では最多だった。松岡さんに聞いた。

     ◇

 ぼく自身は超ネガティブな考え方をしています。それをポジティブなものにする方法を伝えているのが、今回選ばれていることばたちです。「大丈夫、君ならできる」「もっと熱くなれ」って、ぼく自身にかけてきたことばなんです。

 取材をした選手のことばでは、平泳ぎの北島康介さんが印象に残っています。アテネ五輪の前にけがをしていたのに2冠達成。どうしてそんなに強いのか尋ねたら「もう根拠のない自信しかあり得ないですよ」と。挫折を経て、とてつもない練習量を重ねながら自分を信じようとする弱い心も持った北島さんから出たことばでした。

 中高生にとって、負けたり失敗したりすることはとてつもない宝物になります。失敗してもいいんです。その経験は100%、君の力になっていきます。「本気でぶつかってみろ」

 ■有名人の引用、ベスト10

 (1)トーマス・エジソン、ウォルト・ディズニー

 (3)松岡修造

 (4)王貞治

 (5)イチロー

 (6)相田みつを

 (7)マザー・テレサ

 (8)アルバート・アインシュタイン

 (9)スティーブ・ジョブズ

(10)金子みすゞ

 ■わからないままでもいい 「折々のことば」筆者・審査委員長 鷲田清一さん

 家族や友だちといった日常の会話と地続きのところから、ことばを選んだ人が多かった。ありふれたことばでも、それをどう受け止めたかという点で読み応えのある作品が増えました。

 ただ、意味のわからないことばと出会い、衝撃を受けたという体験を書いた作品もあったらよかった。本にあることばでも、自分を揺さぶり、胸をどんと突いてくることがあります。不安のまま、わからないままでもいいんです。ことばとの格闘こそ、自分を変えるパワーになるんです。そんな作品も読んでみたいですね。

 ■佳作

 【中学部門】高橋知佳子(北海道)▽佐々木望(岩手)▽井上真梨子(埼玉)▽冠木実萌、藤倉陽(千葉)▽赤間優月(神奈川)▽伊藤麗奈、與儀優希(愛知)▽浜本愛(大阪)▽伊勢碧(徳島)

 【高校部門】佐々木風美(宮城)▽坪井菜那子(神奈川)▽畑村一樹(愛知)▽高橋茉子(福井)▽藤浪佐也圭(大阪)▽久保田智咲(広島)▽衛本千凜、西野希海(大分)▽西岡滉生、三品怜温(鹿児島)=敬称略

 ■学校賞

 苫小牧市立緑陵中(北海道)▽一関第一高付属中(岩手)▽浦和明の星女子中、久喜市立菖蒲南中(埼玉)▽流山市立おおたかの森中、流山市立東部中(千葉)▽横浜市立岩井原中、鎌倉女学院高(神奈川)▽起工業高(愛知)▽北陸高(福井)▽茨木市立太田中、大阪教育大学付属平野中、大阪桐蔭高、大商学園高、初芝富田林高(大阪)▽広島市立大州中、福山暁の星女子高(広島)▽三池高(福岡)▽大分東明高▽ラ・サール高(鹿児島)※入選を含む50点以上の応募があった学校を選定

 ◆最優秀賞以外の入賞12作品の「ことば」の説明は要約文。入賞・佳作計33作品の全文は公式サイト(http://www.asahi.com/event/kotoba/)で公開しています。なお、大岡信ことば館(静岡県三島市)は昨年11月に閉館しました。

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