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 いったい自分は何者なのか。

 20歳のころは誰しも、見えない未来に思い悩む。

 芸術家をめざした20歳の青年が、こんな手記を残している。

 「時代はわが理想を妨害する。どうだっていい、理想をおし通そうじゃないか」

 でも、弱い気持ちも自分の中に同居する。心は振り子のように揺れ、数日後にはこう記す。

 「現実をみれば、どんな将来の理想もふっ飛んでしまう」「心細さと不安の中に呼吸する。なにくそ」

 青年は、漫画家の故水木しげるさん。いまから76年前、徴兵検査を受けたころの思いだ。

 水木青年が生きた時代といまは、多くのことが違う。だが人の心は、そう変わるものではない。望めばひとかどの人物になれる気がしたり、周りと比べてひどくつまらない存在に思えたり。そして制御できない自分の心にあきれ、いらだつ。

 夢に向かい、道を切り開く契機をつかんだ人もいる。

 「希望」について、きのうのオピニオン面に原稿を寄せた朝井リョウさん(28)は、大学生活を送るなかで小説家になる夢を忘れかけていた。あと数カ月で20歳という時、それを思い出す。執筆以外のことをやめた。在学中にデビューし、平成生まれで初の直木賞作家になった。

 お笑い芸人の山田ルイ53世さん(42)は20歳まで引きこもり続けた。中学は進学校で、成績も上位。だが中2の夏休み明けに心が折れてしまった。

 ある日、テレビをつけると、同世代の成人式のニュースが流れていた。「俺はできる人間や、大丈夫」とずっと自分に言い聞かせてきたのに、画面の晴れ着姿との差は決定的に思えた。「まずい」。奮起して大学の夜間コースに入った。

 引きこもりの6年間は、無駄だったと言う。でも、人生に無駄があってもいい、とも。

 「みんな同じボードゲームをやりすぎやと思うんです。用意されているマスでしか動くことを考えてないから、学校行かなかったらアウト、みたいなことになる。自分でマス目書いたってええんとちゃうか」

 20歳という通過点での生き方で、一生が決まるわけじゃない。自分は自分の道をいけばよい。大人に、ましてや新聞に「かくあるべし」なんてお説教されるのはまっぴらだ、と思うくらいでちょうどいい。その大人たちだって、いまだ冷や汗をかきながらの人生なのだ。

 成人の日、おめでとう。いまを生きる者同士、ともに七転び八起きしましょう。

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