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 「社会保障制度を『全世代型』へと大きく転換していかなければならない」。安倍首相は年頭の記者会見で、改めてこう強調した。

 子育て支援をはじめ、高齢者向けと比べて手薄な現役世代への支えを充実させる。そのために大胆に公費も投じていく。

 方針に異論はない。

 だが、「全世代型」を言うのなら、今の時代を生きる私たちだけでなく、これから生まれてくる「将来世代」にも目を向ける必要がある。

 社会保障の財源は、国債の発行、つまり将来世代へのつけ回しに頼っている。人々が社会保障の行く末に抱く不安を払拭(ふっしょく)するためにも、目先の人気取り政策ではなく、長い時間軸で制度のありようを考える。そうした視点が欠かせない。

 昨年、国内で生まれた赤ちゃんは、推計で過去最少の約94万人だった。高齢化で社会保障費が膨らむ一方で、年金や医療、介護の担い手となる現役世代は減る。どうやって乗り切るか。

 所得や資産が多い人はもとより、消費増税で国民全体に負担を求める。支援が必要な人への給付を急ぎつつ、借金への依存も抑える。2012年に旧民主、自民、公明の3党が合意した税と社会保障の一体改革は、政治が与野党の壁を越えて出した一つの答えだった。

 だが安倍政権は、一体改革の枠組みの変更を決めた。借金抑制に充てる財源を年に2兆円ほど減らし、幼児教育・保育の無償化などに回す。2度にわたる消費増税の延期と合わせ、将来世代への目配りが後回しにされていることは否めない。

 そもそも一体改革の枠組みを維持していても、10%への消費増税だけでは社会保障の借金頼みは解消できなかった。予算編成のたびに社会保障費の抑制にきゅうきゅうとし、あちこちにほころびが生じている現状も忘れてはならない。

 給付と負担の全体像の作り直しに向けて、改めて長期的な視点で議論を始めるときだ。3党合意を一方的に変更した首相には、議論を主導する重い責任がある。

 当面の試金石となるのが、新たな財政再建計画である。

 20年度に基礎的収支を黒字化する計画を、政権は断念した。「財政健全化の旗は降ろさない」とも強調する首相は、どんな道筋を描くつもりなのか。

 目先の拡充策ばかり示されても、暮らしの安心にはつながらない。25年には団塊の世代がすべて75歳以上になる。悠長に構えてはいられない。

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