[PR]

 基本的な考えはまとまった。肝心なのは、それを正しく運用して、主権者である国民への責務を果たすことだ。

 有識者でつくる内閣府の公文書管理委員会が昨年末、行政文書の作成や保存に関する新ガイドライン(指針)を公表した。省庁はこれに基づいて、それぞれの文書管理規則をつくる。

 論議を呼んだのは、省庁間などで打ち合わせをした記録を残す際のルールだ。昨年秋に示された案には、あらかじめ相手方に、記載する発言内容の確認を求める旨の規定があった。

 これに対し、「すりあわせの段階で、省庁間の力関係や忖度(そんたく)がはたらき、かえって正確な記録が作られなくなる」といった声が数多く寄せられた。

 当然の指摘である。

 加計学園の獣医学部新設問題を思い起こすと良い。開学時期は「総理のご意向」だと内閣府側から伝えられた、とする文書が文部科学省で見つかった。こうした政権にとって都合の悪い記録を、今後は残さないための「確認」になりかねない。

 委員会は批判を踏まえ、新指針に「意思決定に至る過程を合理的に跡づけ、検証できるように文書を作成するのが前提」との一文を盛りこんだ。確認前の記録を安易に廃棄しないよう、釘をさす定めも設けた。一定の前進といえるだろう。

 また、保存期間を1年未満とできる文書を絞り、七つの類型を明示した。南スーダンのPKO日報問題や森友学園問題で、多くの文書が「保存期間1年未満」として廃棄され、事実の検証が難しくなったのを受けた見直しだ。旧指針に明確な定めのないことが利用された形だったが、その抜け道をふさいだ。

 しかし、指針や規則をいくらきれいに整えても、官僚の意識を変えなければ、国民に背を向けた運用は続くだろう。

 例えば、保存期間1年未満の類型の一つに「定型的・日常的な業務連絡、日程表」がある。だが南スーダンの例を持ち出すまでもなく、日報や日程表が意思決定の過程をたどる大切な資料になる場合もある。新指針を形式的にあてはめ、公文書管理の精神を骨抜きにするようなことがあってはならない。

 国立公文書館に移管すべき文書なのに、劣悪な状態で省庁の書庫に放置されていた例が多数あった――。昨秋には、政府から公文書管理委員会にそんな調査結果も報告されている。

 法律は、公文書を「国民共有の知的資源」と定める。官僚はその意味するところを、いま一度かみしめてもらいたい。

こんなニュースも