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 経団連が、今年の春闘に臨む経営側の指針に「3%の賃金引き上げ」との文言を盛り込んだ。安倍首相が示した数値を「社会的期待」ととらえ、それを意識しながら、自社の収益に見合った前向きな検討を各企業に望むという。

 経団連が賃上げに前向きになるのは歓迎だ。ただ、指針を公表した担当副会長の会見では「去年よりは頑張ろうねということ」「結果として2%台でもやむをえない」など、消極的な説明が目立った。政権との関係を意識してとりあえず書き込んだというのなら、経済界としての見識が疑われる。

 そもそも労働側の連合は、今春闘でも定期昇給2%、ベースアップ2%の計4%程度の賃上げを要求している。3%の引き上げでは定昇をのぞいたベア分は1%程度で、要求の半分に過ぎない。社会的期待というのであれば、まずは労働者の要求に真摯(しんし)に向き合うべきだ。

 賃上げへの条件はかつてなく整っている。労働市場の需給の逼迫(ひっぱく)は失業率や有効求人倍率を見れば明らかだ。企業全体では空前の利益を上げ、手元の現預金も積み上がっている。一方で労働者への分配率は歴史的にも低い水準に下がったままだ。

 三村明夫・日本商工会議所会頭は年頭の会見で「内部留保が現金で積み上がっているのは、経営者として恥ずかしいことだ」と指摘した。大企業など可能なところはどんどん賃上げすべきだと述べている。

 企業の好業績は、金融緩和による円高修正や法人税の減税など政策面の後押しの恩恵も受けた結果だ。いまこそ、働き手に還元すべきときである。

 デフレ脱却の点でも賃上げは重要だ。過去1年で消費者物価は0・9%上昇し、18年度も同程度の伸びを見込むエコノミストが多い。ベアが低調なら、実質賃金が目減りしかねない。

 経団連は、消費が増えない理由として社会保障制度などでの「将来不安」を挙げる。それも一因だろうが、であればなおのこと、安定した賃上げが消費増に不可欠なはずだ。

 今春闘では働き方改革も大きなテーマであり、働きやすい環境づくりや、残業の減少が収入減につながらない仕組みへの資金の手当ても大切だ。中小企業の底上げも欠かせない。

 いずれにしても、労働者への配分を確実に増やす姿勢が企業に求められている。目先の利益拡大へのこだわりが、賃上げと消費増を通じた長期的な安定成長の桎梏(しっこく)になっていないか。経営者は自問してほしい。

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