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 相続制度を大きく変える案が法制審議会の部会で決まった。政府は民法などの改正案を通常国会に提出する方針だ。

 高齢社会を見すえた、まずは妥当な内容といえるだろう。

 死別して残された配偶者のくらしをどう支えるかという観点から、▽所有権とは別に、故人が残した家を配偶者が無償で使える「居住権」を新設し、住まいを確保する▽結婚して20年以上たった配偶者が家を生前贈与された場合は、遺産分割の対象外とする――などが盛りこまれた。対象外にすれば預貯金など他の財産が多く配分され、生活資金を確保しやすくなる。

 ここに至るまでには、懸念と曲折があった。

 そもそも今回の動きは、最高裁が婚外子への相続差別を憲法の平等原則に反すると判断したのがきっかけだった。これに対し、役所に届け出た結婚こそ手厚く保護すべきだという声が、自民党内などで高まった。

 だが法律婚重視に傾きすぎると、事実婚が増え同性ペアへの理解も進むなど、家族の姿が多様化している現実との溝が広がる。法律婚を前提にしつつ、高齢配偶者の保護を前面に打ちだし、一般の人々の意見も幅広く聴取したことが、一定の納得感につながったといえる。

 改正案は、介護したり仕事を手伝ったりして故人に特別の貢献をした親族が、相続人に金銭を請求できる定めも設けた。たとえば長男の妻が義父母の面倒をみた場合が想定される。

 この考えについても、特定の立場の人に役割を強いる圧力になりかねない、介護問題に社会全体でとり組む機運を阻害するのではないか、といった批判が寄せられた。一方で、何らかの手当てを求める声も強く、妥協の産物としてまとまった。

 事実婚夫婦の扱いともども、社会情勢を踏まえ、適宜見直していくべき事項だろう。

 議論をふり返って思うのは、自分の意思を明らかにし、報いる人に報いて、死後の争いをなくすことの大切さだ。遺言を残す、生前贈与する、介護する人と契約を結んで対価を支払うなどの方策が考えられる。

 文化や慣習にかかわる難しい問題だが、遺言制度を使いやすいものにすることも、今回改正の柱の一つになっている。

 相続制度のあり方は国民生活に大きな影響を及ぼす。法整備の重要性は言うまでもない。だが相続分などの定めは、基本的に遺言がない場合の決まりだ。争続といわれる事態を招かないためにも、個人でできること、やっておくべきことがある。

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