[PR]

 失望の連続だった。米大統領としての資質に欠ける疑いが深まる一方である。トランプ氏がきょうで就任1年を迎えた。

 大統領選をめぐるロシア関連疑惑、側近や高官の解任など、政権は揺れ続けた。米国内に不安が広がり、世界の目に映る米国の姿も色あせてきた。

 露呈したトランプ氏の思慮の浅さは目にあまる。

 核のボタンを手にしたと誇る北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)氏に対し、「私のはずっと大きくパワフルだ」と応じる。これほど軽率に核戦争を口にする米軍最高司令官の存在は危険というほかない。

 人種や宗教をめぐる差別意識は相変わらずだ。イスラム教徒への差別をあおる動画をツイッターで拡散したほか、中米やアフリカの国々を「肥だめ」と呼んだ疑惑が浮上した。

 「力による平和」をとなえるトランプ氏は、米国の力の源泉を見誤っている。軍事と経済がすべてではない。自由と平等を重んじる寛容な多元主義という理念こそが、世界での指導的な地位を裏打ちしてきた。

 中国やロシアなど、台頭する各地の国々は軒並み、独裁や排他的な強権統治を強めている。その潮流のせき止め役になるべき米国が逆に、自らの理念を損ねていくのは嘆かわしい。

 この間は、米国の統治システム全体の健全さが試されてきたともいえる。一部の移民・難民に扉を閉ざそうとした大統領令に対し、司法がただちにブレーキをかけたのは救いだった。

 しかし本来、政権を常に監視し、外交政策でも安全弁となるべき議会の存在感は薄い。都合の悪い報道を「フェイク」と切り捨て、司法の独立や報道の自由などの原則を侮蔑する大統領をいさめる議員は少ない。

 上下両院の多数派を握る与党共和党の責任は重い。トランプ氏の支持率は全体では3割台だが、共和党支持者に限れば、まだ7割ある。その現実を前に口をつぐむなら、米議会も狭量な保身政治のそしりを免れまい。

 11月には上院の3分の1と下院の全議席を改選する中間選挙がある。今の政治で傷つけられているものは何か、議員と有権者全体で考えてもらいたい。

 一方、この異色な大統領との個人的な関係がめだつ外国首脳といえば、安倍首相である。

 気候変動対策に背を向けるなど国際社会にとって米政権のリスクが高まる中、ひたすら蜜月関係を強調するのは異様だ。

 国際秩序の行方が危ぶまれるからこそ西欧の首脳と同様、トランプ氏に率直に苦言を呈す。その責任が安倍首相にある。

こんなニュースも