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 46億年の地球史に「チバニアン(千葉時代)」が刻まれる可能性が出てきた。その基準となる千葉県市原市の地層には、地磁気が反転した跡が残る。地球科学の理解などに貢献してきた地磁気だが、メカニズムは十分解明されていない。

 地球は、巨大な磁石に例えられる。地球の誕生から46億年の間に、N極とS極が何度も入れ替わってきた。その影響は地球全体に及ぶため、地質学では地磁気の反転などを目印にして、115の時代に分けている。

 昨年11月、「チバニアン」という言葉が注目された。千葉県市原市の養老川沿いにある地層が、約77万年前の地質の境界を示す基準地として、「国際地質科学連合」の1次審査に通ったからだ。同連合が今後、時代境界を代表する地層として認めれば、マンモスやネアンデルタール人がいた77万年前~12万6千年前は「千葉時代」になる可能性がある。

 千葉の地層の特徴は、地磁気が反転した痕跡がはっきり残っていることだ。地層は水深1千メートルほどの海底でたまった泥が固まった泥岩。「チバニアン」を同連合に申請している日本チームの、岡田誠・茨城大教授(古地磁気学)は「以前からこのあたり一帯の地層が『最後の地磁気反転』を示すという話はよく知られていた」と話す。

 岡田さんらは、泥の中に含まれる「磁鉄鉱」という鉱物が、堆積(たいせき)した当時の磁場を保存する特性を利用。千葉の地層を調べたところ、計57メートルにわたって地磁気が反転する様子が読み取れた。

 さらに、境界部分に残る火山灰に含まれる「ジルコン」という鉱物を元に年代を測定し、77万年前が時代の境界にあたることも明らかにした。

 岡田さんは「このほか、化石の分析なども含めて総合的にデータを集められたことが大きい。まだ審査は続くので、承認されるように対応を続けたい」としている。

 ■360万年で11回反転

 地磁気はどんな仕組みでできるのか。

 地球の中心部「内核」のまわりには、溶けた鉄の厚い層「外核」がある。この鉄が地球の自転などによって流れ動くことで電流が生じ、電磁石と同じ原理で地磁気が発生する。この仕組みは「地球ダイナモ作用」と呼ばれ、スーパーコンピューターを使って地球内部の動きを理解する研究が1990年代半ばから活発になってきた。

 海洋研究開発機構の宮腰剛広主任研究員らは、円柱状の渦の塊だと考えられていた外核の流れが、カーテンのような薄いシート状の対流構造を持つことなどを研究で明らかにした。宮腰さんは「地磁気の反転は、何らかの刺激によって外核を流れる電流の一部が逆流し、全体に広がることで起きると考えられる」と話す。

 地磁気は過去360万年間に少なくとも11回反転したと考えられている。海底に跡が残る2億年の平均では20万年に一度だが、間隔は一定ではなく、約4千万年にわたって反転しない時期もあった。地層の痕跡から、瞬時に反転するのではなく、数千年かけて磁場が変わるとみられる。

 直近となる77万年前の反転以降も、地磁気が弱まる現象が十数回起きている。外核の流れに乱れが生じるものの、全体に広がらず、元に戻ったためではないかと考えられている。

 ただ、こうした仮説を立証するには、現在のスパコンの計算能力では不足している。今のところ、数百万年間の外核の流れだけをシミュレーションしているが、その外側にあるマントルや地殻の動きは含まれていない。反転のきっかけも含めて地磁気のメカニズムを解明するには、地球全体のふるまいを考える必要がありそうだ。

 ■生きものに恩恵も

 地磁気は、私たち生きものへの恩恵ももたらしている。

 地磁気は、北極と南極を結んで、宇宙空間に半径6万キロ以上の磁気圏を作っており、人間などにとって有害な太陽風や宇宙線を曲げて防ぐ。長期的には大気を地表にとどめる役割も果たすと考えられている。地磁気が反転する際、こうした効果が弱まる可能性があるが、過去に生物の大量絶滅につながったという痕跡は見つかっていない。磁気が徐々に弱まり、反対側の極に変わると考えられている。

 かつて、火星にも磁場があったと考えられているが、現在はない。宮腰さんはそれぞれの惑星に磁場があるかどうかが「生命が生まれる惑星の条件」ではないかと指摘する。

 地球の構造を理解する上でも役立っている。板状のプレート(岩板)が地表を動き続けるという学説「プレートテクトニクス」は、地磁気が反転した痕跡が大きな手がかりになった。

 米国などの研究チームが60年代、海底の岩石に残された地磁気を調べたところ、海底の山脈「海嶺(かいれい)」を軸にして、N極とS極の向きがしま模様のように交互になっていることがわかった。岩石は、マグマが海嶺から噴出して固まる際に磁気を帯びたものだ。模様をたどれば、海底のプレートがどのくらいの時間で移動しているのかわかる。

 こうした研究によって、海嶺でつくられたプレートが、ベルトコンベヤーのように少しずつ移動し、日本列島周辺などの海溝で再びマントル深部に沈み込むという、メカニズムの解明が進んだ。(川原千夏子)

 ◇「科学の扉」は毎週日曜日に掲載します。次回は「2018年、注目の天文現象」の予定です。

 <訂正して、おわびします>

 ▼21日付科学の扉面「地球に磁場 まだまだ謎」の記事で、地磁気反転のきっかけが「外核の流れの一部が逆流」とあるのは、「外核を流れる電流の一部が逆流」の誤りでした。外核の溶けた鉄の流れの向きは変わらないまま、電流の向きだけが逆流するという研究例について、取材時の確認が不足していました。

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