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 NHKが18年度から3カ年の経営計画を発表した。放送に加え、ネット配信も活用した「公共メディアへの進化」を重点方針の第一にかかげる。

 だが、華々しいアピールの陰で、視聴者が置き去りにされた感は否めない。

 象徴的なのは、籾井(もみい)勝人前会長が提唱した受信料の値下げが見送られ、一部対象者への減免措置にとどまったことだ。事業収入は過去最高を更新中。毎年7千億円を大きく上回り、20年度の繰越金は600億円を超えるにもかかわらず、である。

 理由としてNHKは、東京五輪に向けたスーパーハイビジョン(4K・8K)の設備投資などに巨費がかかることを挙げる。しかし、そうまでして超高精細な画像がなぜ必要なのか、丁寧な説明はない。「一度値下げすると値上げは難しい」という石原進経営委員長の発言は、世の中にどう受けとめられたか。自己都合が過ぎよう。

 視聴者の視線は厳しさを増している。事実をゆがめた番組づくり、取材費の流用、受信料の着服など不祥事が相次ぐ。報道姿勢をめぐっても、政権との距離感を欠くとして公正さを疑う声は絶えない。いずれもNHKの存立にかかわる問題だ。

 若者を中心にテレビ離れが進み、メディア環境が激変するなか、NHKの公共性とは何か、何が期待されているのか、突っ込んだ議論が必要だ。

 受信料訴訟で政府が最高裁に出した意見書は、災害時などの情報提供を使命と位置づけたが、それにとどまるものではない。NHKには、社会全体に情報を届け、人々の知識や教養を底支えしてきた歴史がある。不確かな言説がネット上に飛びかういま、使命はますます重くなっているとの見方も強い。

 だが、意欲的で優れた番組がある一方で、いい意味でのNHKらしさが薄れてきているのを危ぶむ声は少なくない。表向きは否定するが、現場からは「視聴率主義が強まっている」との嘆きがしきりに聞かれる。

 民放の二番煎じのような安易な演出や、近年目に余る番組宣伝の多さは、NHKに対する信頼を深いところで傷つける。視聴率に結びつかなくても、多様な価値観をすくい上げ、人々のニーズにきめ細かく対応した放送がなされなければ、市民が受信料で支える意義はない。

 上田良一会長は年頭あいさつで「NHKの公共性が問われる年」と述べた。その言葉通り、批判に真摯(しんし)に向き合い、社会との対話を深めることが、この巨大組織に求められている。

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