[PR]

 企業が配慮するべき人権を広くとらえ、保護に努めるよう求める声が世界で広がっている。

 自社やグループ企業はもちろん、原材料の調達から加工・製造、販売まで、取引全体に目配りする必要がある。従業員を大切にするだけでは不十分で、環境破壊も住民に対する人権侵害だ――そんな考え方である。

 経団連も昨年、企業行動憲章を改定し、「人権の尊重」をうたう条文を新設した。だが、日本企業の動きは鈍い。批判をかわす守りの発想にとどまらず、積極的な姿勢を見せてほしい。

 ビジネスと人権の関係については国連が11年、原則を打ち出し、各国政府の義務と企業の責任などを示した。

 その2年後、バングラデシュで縫製工場が入ったビルが崩壊し、千人を超す犠牲者が出た。世界的な有名ブランドを支える下請け労働者の劣悪な環境が衝撃を与え、大手企業の責任を問う動きが本格化した。

 人権と環境を結びつける流れが強まったのは、15年に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)がきっかけだ。

 17分野のうち企業にとって人権に直接かかわるのは働き方、ジェンダー平等などだが、気候変動や生態系・森林、水も人権に引きつけて考える。そうした視点は、SDGsがうたう「誰一人取り残さない」と重なる。

 日本企業では、「ユニクロ」が昨年、アジア7カ国の縫製工場140余りを公表したことが注目されたが、背景にはNGOからの要求があった。花王は、製品の原料であるパーム油や紙・パルプへの配慮をはじめ、人権侵害がないか幅広く調べる姿勢が評価されているが、取り組みを加速させたきっかけは、やはりNGOからの批判だった。

 今後企業に問われるのは、自らすすんで人権問題に向き合えるかどうかである。

 どう取り組めばよいのか、戸惑う声は少なくない。そんな企業の一つだったANAは、まずは機内食の食材調達などわかりやすい課題に絞り、少しずつ広げていく方針という。参考になるのではないか。

 企業を動かすのは、NGOだけではない。

 農林水産分野をはじめ、NGOなどが人権や環境の観点から認証を与えた商品は着実に増えている。企業を環境と社会、社内統治の三面から評価し、資金の振り向け先を決める「ESG投資」をうたう投資信託も目立ってきた。

 商品の購入や資金運用を通じて応援する企業を選ぶ。それが企業を変える原動力になる。

こんなニュースも