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 小さな風穴、ではある。それでも一歩前進だ。

 市民団体が内閣官房機密費の使い道を明らかにするよう求めた裁判で、最高裁が文書の一部開示を命じた。公開を一切拒んできた政府は、その国民不在の姿勢を猛省する必要がある。

 機密費は、内閣官房の仕事を円滑に進めるために機動的に使える経費とされる。官房長官が管理し、政策への協力を依頼する際の対価(政策推進費)や情報提供者への謝礼、飲食代、慶弔費などに使う。毎年十数億円が計上され、会計検査院によるチェックも限られる。

 最高裁は、機密費全体から、いつ、いくらを政策推進費に繰り入れたかを記録した文書や、毎月の支払総額などの公開を命じた。その範囲なら個別の支払先や目的が判明する可能性はなく、業務に支障が及ぶおそれはないと結論づけた。16年2月の大阪高裁判決は、飲食費の支払いを決定した日付なども公開対象としたが、最高裁はそこまでは踏みこまなかった。この点は不十分と言わざるを得ない。

 他国に関する情報収集など、秘密を要する活動があることは否定しない。だが、裁判にのぞんだ国側の姿勢には重大な疑義がある。機密費の使途に国民やメディアが関心を寄せること自体、大きな迷惑だと言わんばかりの主張を繰り広げた。

 実態はどうか。

 自民党から民主党への政権交代があった09年の衆院選後に、一度に2億5千万円もの機密費が引き出された。選挙費用に充てたのではないかとの疑念が持ちあがった。ほかにも国会対策と称して、機密費から与野党の国会議員らにカネやモノが渡ったことを示す、官房長官経験者の証言や記録がある。

 他者の目が届かなければ必ず腐敗は起きる。機密費の扱いの見直しは必至だ。外交文書と同じように、一定の期間が過ぎた後に第三者が検証できる仕組みの導入も検討すべきだろう。

 興味深いのは山本庸幸判事の個別意見だ。文書に公開、非公開双方の情報が混在している場合、「情報は一体のもの」としてすべて非公開にしてしまう考えを批判し、一つ一つ丁寧に検討していく必要性を指摘した。当然の見解で、この問題を議論していくうえで参考になる。

 民主主義をなり立たせる基盤が情報公開であることを理解せず、その範囲を狭めようという動きは、中央・地方を問わず厳然としてある。とりわけ現政権にはその色が濃い。判決を、こうした誤った考えを正す機会にしなければならない。

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