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 主要国で最悪の財政をどう立て直すか。その目標と計画の土台となる中長期の財政試算を、内閣府がまとめた。

 試算では、実質で毎年度1・4~2・1%という高めの成長を続けた場合と、「巡航速度」の1%強の成長率で推移した場合という2通りを想定。借金に頼らずに政策経費をまかなえるかを示す基礎的財政収支(PB)が黒字になるのは、高めの成長の場合でも27年度とした。

 新たな財政再建目標を巡る議論では、基礎的収支の黒字化を27年度からどれだけ前倒しするかが焦点になりそうだ。

 財政を立て直すには、景気に目配りしつつ、増税と歳出削減を組み合わせるしかない。国民の理解を得るには、国会での徹底的な議論をはじめ、開かれた場での検討が不可欠である。

 ところが安倍首相は、財政問題に向き合おうとしていない。

 法律で定められている消費増税に関しては、増税延期や増税分の使途拡大を、衆院解散とセットで唐突に打ちだしてきた。そうして国民に受けが良さそうな政策変更を選挙の売りにする一方、反発が必至の負担増や歳出への切り込みについては、選挙戦や予算編成の際にも語ること自体がほとんどない。

 安倍政権はもともと、基礎的収支を20年度に黒字化するとしてきた。達成できなくなったのは消費増税分の使い道を教育などに広げることにしたからだというが、その前から経済成長と税収増頼みの財政運営は行き詰まり、達成は絶望的だった。

 同じ過ちを繰り返さないよう、首相は今度こそ現実を直視しなければならない。だが、早くも不安が募る。相変わらず成長頼みの姿勢が見えるからだ。

 今回の試算では、高めの経済成長を実現した場合について、従来より成長率の見通しを引き下げた。これまでの2%超という想定に対し、首相が議長を務める経済財政諮問会議でも「現実的なシナリオにするべきだ」と批判されたからだ。

 とはいえ、今回も成長率を左右する生産性の上昇率について、近年で最も高かった82~87年度並みと仮定した。バブルに向かっていた時期と現在を重ねるのが適切だろうか。

 ここは、もう一つの1%強の成長率を前提に、財政再建を論じるべきだ。その場合、基礎的収支は27年度でも8・5兆円の赤字が見込まれていることから目を背けてはならない。

 成長率を高める政策に知恵を絞りながら、財政面では過度な期待を捨て、慎重な見通しのもとで目標と計画を練るべきだ。

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