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 米国のトランプ大統領が、昨年1月の就任直後に離脱を表明した環太平洋経済連携協定(TPP)について、復帰も含めて検討することを表明した。

 世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)での演説で、「すべての国の利益になるなら交渉を検討する」と語った。

 「米国第一」を掲げ、TPPや温暖化対策のパリ協定など多国間の枠組みに一貫して背を向けてきた大統領が方針を転換したのであれば、歓迎したい。

 米国が復帰すれば、TPP参加国の経済規模が世界に占める比率は1割強から4割近くに高まり、圧倒的に大きな自由貿易圏となる。アジア太平洋地域の安定にも寄与するだろう。

 ただ、トランプ大統領の真意は、はっきりしない。TPP復帰に言及したものの、国際通商ルールより米国の利益を優先する保護主義的な考え方を捨てたとは言えないからだ。

 トランプ政権は今月、太陽光パネルや家庭用大型洗濯機の輸入が急増しているとして、通商法201条に基づく緊急輸入制限(セーフガード)を発動すると発表した。02年にブッシュ政権が発動して以来で、その時は世界貿易機関(WTO)が協定違反と認定した。今回も、大きな影響を受ける中国や韓国は強く反発している。

 北米自由貿易協定(NAFTA)をめぐるカナダ、メキシコとの再交渉も、米国が自らの貿易赤字の削減にこだわり、決着のメドは立っていない。

 TPPについても、ダボス会議に先立つ米テレビ局のインタビューで「以前よりずっといい協定が得られれば、私はTPPをやる」と語り、米国に有利な内容を目指して再交渉を求める構えだ。日本にも農産物などでさらなる市場開放を迫ってくるだろう。

 各国の利害対立から交渉期間が5年を超えたTPPは「ガラス細工」と称され、わずかな変更でも改めて合意を取り付けるのは難しい。再交渉になれば、まとまらない恐れがある。

 米国を除く11カ国は、米主導で盛り込まれた一部の項目を米国復帰まで凍結する新たな協定案で最終合意し、3月に署名式を開くことを決めたばかりだ。

 まずは署名、そして発効に向けた各国内の手続きを急ぐべきだ。11カ国としての足場を固め、まとまって米国と向き合うことが大切である。

 安倍首相はトランプ大統領との緊密な関係を誇る。「米国第一」を見直すことこそがTPP復帰につながることを、粘り強く説くべきだ。

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