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 「受動喫煙防止対策を徹底します」。安倍首相は先週の施政方針演説で力説した。だが、これではとても「対策」とは呼べない。出直すべきだ。

 厚生労働省が、今国会での成立をめざす健康増進法改正案の骨子を発表した。注目された飲食店の扱いについては、屋内禁煙を原則としつつ、個人や中小企業が現に経営する小規模店では「喫煙」「分煙」の表示をすれば喫煙を認めるという。

 小規模かどうかの基準は、面積150平方メートルを軸にさらに検討する。昨年3月の厚労省案は「30平方メートル以下のバーやスナック」に限って喫煙を許していたが、今回の案では業態の縛りも取り払われている。

 何のことはない。規制に抵抗する自民党議員らの考えを、ほとんど丸のみした内容だ。

 東京都の調査では、都内の飲食店の約9割は150平方メートル以下で、全体の4分の3が自営店だった。つまり、多くの店でたばこが吸えることになり、従業員の受動喫煙も防げない。

 何をもって「分煙」と判断するかも経営者の判断に委ねられる。隣席で吸っていても分煙、という状況もありうる。分煙が不徹底な場合は、20歳未満の客やスタッフが店に立ち入るのを禁じるというが、家族連れの来訪を店側が進んで断るなど、現実にありうるだろうか。

 こうした既存店への特別措置は将来廃止するとしている。だが時期は未定で、法的裏づけもない。骨抜きも極まれりだ。

 厚労省は、受動喫煙を防ぐために飲食店が専用の喫煙室をつくる際の助成費用として、新年度予算案に33億円を計上した。これも筋違いだ。

 日本も加盟する「たばこ規制枠組み条約」の指針が求めるのは、飲食店をふくむ公共施設での「屋内全面禁煙」であり、喫煙室方式を認めていない。漏れ出る煙で、受動喫煙はなくならないからだ。そもそもがん対策推進基本計画で喫煙率を下げる目標をかかげる厚労省が、税金で喫煙室の設置を進めるのは、矛盾と言うほかない。

 政府と足並みをあわせるように、独自の受動喫煙対策を表明してきた東京都が2月議会への条例案提出をとりやめた。小池知事は国の先を行くのではなかったか。このまま機運がしぼんでしまわないか心配だ。

 最近、五輪を開いた中国、カナダ、英国、ロシア、ブラジルはいずれも公共施設での屋内全面禁煙を法制化している。このままでは、東京五輪・パラリンピックで来日する人々を、紫煙で迎えることになりかねない。

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