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 札幌市の共同住宅で火災があり、11人が亡くなった。住宅は生活困窮者らを支援する民間団体が運営しており、生活保護を受けていた70~80歳代の高齢者が多く犠牲になったようだ。

 改めて浮かび上がるのは、防火対策が万全とはいえない老朽化した住居が、経済的に苦しく行き場のないお年寄りらの受け皿になっている現実である。火災の原因や管理の適否は消防や警察の調べを待たねばならないが、そうした人たちの住まいの確保を民間任せにせず、公的に支えていく手立てを早急に検討する必要がある。

 運営団体は北海道の福祉関係者には知られた存在という。行政などから紹介されて入居した人もいたようだ。築50年ほどの木造の元旅館で、消防法で義務づけられた消火器や自動火災報知設備は備え、スプリンクラーの設置義務はなかった。

 生活困窮者向けの宿泊場所としては、無料低額宿泊所がある。高齢者に住まいと食事などのサービスを提供する施設では有料老人ホームがある。それぞれ法律に基づき、届け出が必要な福祉施設だ。

 厚生労働省は、火災を起こした住宅がどちらかに該当する可能性があるとみて調査に乗り出した。有料老人ホームで、自力での避難が難しい入居者が多い場合は、スプリンクラーの設置は義務となる。

 厚労省はいまの国会に、無料低額宿泊所への規制を強化する社会福祉法改正案を出す予定だ。事前の届け出を義務づけ、指導・監督を強める考えだ。

 しかし、規制の強化だけでは問題は解決しない。

 法に基づく福祉施設には居室の面積などに基準があって安心・安全は高まるが、その分費用もかさむ。一方、生活困窮者の支援団体は資金繰りが苦しく、寄付頼みの所も少なくない。規制強化で利用料が上がったり、団体が活動できなくなったりすれば、困窮者が行き場を失いかねない。

 東京理科大学火災科学研究センターの関沢愛教授は、実態として福祉施設と判断できる施設について「運営団体の申請に基づき、自治体が審査してスプリンクラー設置の費用を助成しては」と提案する。当面の公的支援策として一つの案だろう。

 川崎市の簡易宿泊所で3年前に11人が亡くなった火災や、北九州市や秋田県横手市で昨年起きたアパート火災など、貧しい高齢者の悲劇が後を絶たない。社会全体で住まいをどう保障するか。現実と向き合い、具体策を急がねばならない。

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