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 学校法人「森友学園」への国有地売却問題をめぐる国会の議論がかみ合っていない。財務省内に存在する新たな資料や、交渉の様子を記録した音声データが明らかになる中、野党は追及を強めるが、与党は佐川宣寿・前財務省理財局長(現・国税庁長官)や安倍晋三首相の妻昭恵氏らの国会招致を拒否。首相は「安倍晋三記念小学校」をめぐる朝日新聞の報道を批判している。

 「国民のもやもやとした疑問を解消することが大事だ」

 5日の衆院予算委員会。立憲民主党の逢坂誠二氏は、佐川氏の国会招致を改めて求めた。佐川氏は昨年の通常国会で森友側との事前の価格交渉を否定し、交渉記録を「廃棄した」と答弁。その後、新資料などの存在が明らかになり、「税の行政の信頼性を損ねる」(逢坂氏)と考えるからだ。

 だが、麻生太郎財務相らは「それなりの説明はさせていただいている」。逢坂氏は「『佐川隠し』じゃないか」と指摘したが、与党は佐川氏の招致に応じない構えを崩さない。

 もうひとつの焦点である安倍昭恵氏の招致では、もっぱら首相が答弁に立つ。野党は売却価格が大幅に割り引かれた経緯に昭恵氏が関与しているか、直接本人に確認したい考えだが、野党から昭恵氏について質問された際、首相は朝日新聞の報道に再三触れている。

 5日のやりとりは、次のようなものだ。

 昭恵氏が「真実を知りたいと本当に思う。何にも関わっていない」と発言したと報じられたのを受け、逢坂氏が「真実を知りたいのは国民だ。発言を聞いてどう思うか」と質問。すると、首相はこう答弁した。「『安倍晋三記念小学校』、こう(学園理事長だった)籠池(泰典)さんが申請した。朝日新聞が事実かのごとく報道した。実は『開成小学校』だったんですよ」

 首相はさらに「ウラ取りをしない記事」と述べ、「この籠池さん、これ真っ赤なウソ」と強調した。

 通常国会召集後、首相は1月29、31日、2月1、5日の衆参両院の予算委で、朝日新聞が報じた籠池前理事長へのインタビュー記事が誤っていると繰り返し指摘。報道内容についての質問を受けた発言でなく、野党側は「前理事長の証言の信用性を低下させる狙いがある」(立憲幹部)とみる。参院予算委理事会では「特定の企業の名前を出して、あのように答弁するのは、参院の品位を考えていかがなものか」(共産党の辰巳孝太郎氏)との指摘が出た。

 そもそも森友問題で野党が昭恵氏の招致を求めるのは、昭恵氏が2015年9月から17年2月の問題発覚まで、新設予定の小学校の名誉校長を務めていたためだ。昭恵氏付の政府職員が前理事長の依頼を受け、財務省理財局に照会をかけていたことも判明している。

 「先ほどの逢坂氏とのやりとりを聞いていて、少し残念だった」。5日の予算委で逢坂氏の後に質問に立った希望の党の玉木雄一郎代表は、こう切り出した。玉木氏は、大阪府の担当課長から昨年2月に話を聞いたときのことを紹介し、こう続けた。「(申請前の)相談の段階で、いくつか案があったと。どういう案でしたかと聞いたら、安倍晋三記念小だったと、担当課長は答えていた。『誤報だ』とかではなく、真摯(しんし)に説明をいただきたい」

 ■朝日新聞の報道経緯は―― 国が黒塗り開示、籠池氏に取材

 首相が指摘する記事は、昨年5月9日付朝刊に掲載したものだ。森友学園の籠池泰典・前理事長が2013年9月に近畿財務局に国有地取得の要望書を出した際、小学校を設立するための設置趣意書を添付し、そこに「安倍晋三記念小学校」の名称を書いていたと証言した、と報じた。昨年11月、実際には「開成小学校」と書かれており、「安倍晋三記念小学校」ではなかったことが判明した。

 「安倍晋三記念小学校」の名称は、学園が建設計画を進めていた当初、使っていた校名だった。

 学園が14年春ごろ、運営する幼稚園の保護者に配ったとされる小学校への寄付金の「払込取扱票」には、安倍晋三記念小学校という文言が印刷されていた。前理事長も一時期、この校名で寄付金を募っていたと認めている。

 学園側が大阪府に小学校の設置認可申請書を出したのは同年10月。大阪府教育庁の幹部などによると、その時点では「瑞穂の國(くに)記念小學院」となっていたが、学園側は申請前、府に対して安倍晋三記念小学校も仮称として使っていた。

 昨年2月の問題発覚後、国会では安倍晋三首相や、小学校の名誉校長に就いていた昭恵氏の存在を財務省側が意識していたかが焦点となった。安倍晋三記念小学校という名称についても昨年3月14日の衆院本会議や、前理事長の証人喚問があった同月23日の参院予算委などで繰り返し取り上げられた。

 そうした中、昨年5月8日、衆院予算委員会で当時民進党の福島伸享氏が、財務省から開示された設置趣意書の大部分が黒塗りだったことを明らかにした。福島氏は前理事長からの聞き取り結果として、タイトル部分に安倍晋三記念小学院(小学校)と書いていたのではないかと質問。前理事長らに開示の同意を得たとし、説明を求めた。

 同省の理財局長だった佐川氏は「学校の運営方針に関わることなので、情報公開法の不開示情報になっている」と拒んだ。前理事長の同意があっても、学園が民事再生手続き中であることを理由に、開示するとしても管財人への確認が必要だとも説明した。福島氏は「タイトルがなぜ不開示情報なのか」と批判していた。

 財務省が説明を拒んでいる以上、当事者の前理事長にどう記載したかを確認する必要があると考え、朝日新聞は同日の国会審議後にあったインタビューで複数回にわたって質問。前理事長は「安倍晋三記念小学校」と設置趣意書に記載したと答えた。

 記事では前理事長の証言にもとづき、「籠池泰典氏が8日夜、朝日新聞の取材に応じ、『安倍晋三記念小学校』との校名を記した設立趣意書を2013年に財務省近畿財務局に出したと明らかにした」と報じた。

 財務省は前理事長のインタビューから半年たった昨年11月、立憲民主党に対し、管財人から「開示されても支障はない」との意見書を得たとして、設置趣意書を開示。実際には小学校名が「開成小学校」と記載されていた。

 朝日新聞は、前理事長の証言として「安倍晋三記念小学校」と報じたことを含め、この事実を同月25日付の朝刊で「森友の設置趣意書を開示 小学校名は『開成小学校』 財務省」との見出し(東京本社最終版)で伝えた。

     ◇

 安倍首相は5日の衆院予算委で「(昭恵氏が)棟上げ式に行ったと籠池さんが証言した。これも朝日新聞が大々的に報道した」と述べた。今年1月28日付の朝刊「首相夫人に言及 減額迫る」の記事を指しているとみられる。

 この記事では、前理事長ら学園側が16年春、国に土地の購入を申し入れた時期の協議で「棟上げのときに首相夫人が来られることになっている」と言及しながら国有地の減額を求めていたことを音声データをもとに報じた。前理事長は「棟上げ式に来た」とは述べておらず、記事中にもそのような表現はない。

 

 ■森友学園への国有地売却問題と小学校の名称をめぐる経緯

<2013年9月> 森友学園が、大阪府豊中市の国有地に建設を目指した小学校の設置趣意書を、財務省近畿財務局に提出

<14年春ごろ> 学園の幼稚園の保護者に配ったとされる小学校への寄付金の「払込取扱票」に「安倍晋三記念小学校」と記載

<10月> 学園側が大阪府に設置認可申請書を提出。府教育庁の幹部によると、名称は「瑞穂の國(くに)記念小學院」。府によると、申請前には仮称として「安倍晋三記念小学校」という名称も使っていた

<17年3月> 籠池泰典前理事長が、国会の証人喚問で「当初は安倍晋三記念小学校とするつもりだったが、昭恵夫人から首相の名前を使うことを遠慮してほしいという旨の申し出があった」と証言

<5月> 衆院予算委員会で当時民進党の福島伸享氏が、設置趣意書に「安倍晋三記念小学院(小学校)」と記載があったのではないか、と質問。朝日新聞は同じ日、籠池前理事長にインタビューし、翌日付の朝刊で「安倍晋三記念小学校」と記した設置趣意書を近畿財務局に提出したとする前理事長の証言を掲載

<10月> 設置趣意書の表題の一部や本文の開示を求めた神戸市の大学教授が、近畿財務局の不開示決定の取り消しを求めて提訴

<11月> 財務省が設置趣意書を立憲民主党に開示。「開成小学校」と記載していたことが明らかに。朝日新聞は、「安倍晋三記念小学校」と記したという籠池前理事長の証言を掲載したことも含めて報じた

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