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 これが世界唯一の戦争被爆国である日本政府のとるべき態度か。米国の核軍拡に追従する姿勢からは、「核なき世界」をめざす意思の片鱗(へんりん)も見えない。

 米トランプ政権が出した核政策の指針「核戦略見直し」に対する反応である。核廃絶の理想を捨て去った、この指針について河野外相は「高く評価する」とする談話を出した。

 指針は、核を使う姿勢を強めて相手を抑止する発想に貫かれている。小型の核の開発で使いやすさを高め、核以外の攻撃にも核で応じる可能性を示した。

 河野氏は「核抑止と核軍縮は相反するものではない」というが、指針の内容は明らかに核軍縮の流れに逆行している。

 究極兵器を使うハードルを下げ、予測困難な要因で核戦争に陥ればどうなるか。4年前の外務省委託研究は、人口100万の現代都市で広島原爆級なら約27万人、水爆なら約83万人の死傷者が出ると推計している。

 核の非人道性を身をもって知る国として、日本には世界の核軍縮を率先する使命がある。なのに、対米同盟の狭い枠内でしか核問題を考えていないのが今の日本政府の姿だ。

 米国の指針は、昨年に国連で採択された核兵器禁止条約についても「全く非現実的」と冷視している。指針に寄り添う河野氏には、条約を推し進める国際世論との接点を見いだす意欲もないのだろうか。

 東アジアの安保環境の中で、日本が米国の「核の傘」の下にあるのは事実である。だが、同じく傘の下にあるドイツのガブリエル外相は米の指針に苦言を呈す。「核軍拡競争が進めば、欧州は危うくなる。だからこそ新たな軍備管理・軍縮に動かなければならない」と。

 おりしも、オバマ前政権がロシアと交わした戦略核削減の条約は今週に履行の期限を迎え、両国とも削減達成を発表した。ここから世界は核軍拡・拡散に向かうか、核軍縮・廃絶に向かうか、大きな岐路にある。

 一昨年春、広島で安倍首相はオバマ前大統領と並び、核なき世界をめざすと語った。米政権が変われば誓いも変わるというのでは、あまりに浅薄だ。

 日本政府は毎年、国連に核兵器廃絶決議案を出し、核保有国と非核保有国の「橋渡し」役を任じてきた。いま一度、日本の責務を見つめ直す時だ。

 同盟国だからこそトランプ政権の核軍拡に歯止めをかけ、冷静に北朝鮮問題の打開を探る。被爆者団体と協調し、核廃絶をめざす外交の発信力を高める。その努力が求められている。

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