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 ベルリンの壁が人間を東西に隔てていた日々と、壁が姿を消してからの日々。後者の長さが今月、分断の日数を超えた。

 28年をへても、ドイツの東西地域の間にはなお格差が残る。旧東独の方が失業率が高く、公的年金や給与の水準が低い。

 近年、受け入れた難民や移民の割当数も東側が少ない。経済的な不満と、歴史的に国際化が遅れたことから、移住者への抵抗感は強いとされる。

 その旧東独圏で昨秋の総選挙の際、とりわけ人気を博し躍進したのが、「反難民」をかかげる新興右翼の政党だった。

 自由を得たはずの東側が、四半世紀のちに国の門戸を閉ざす方向に動いているとすれば、なんとも皮肉な歴史に見える。

 このまま寛容さと国際指導力が陰る国になるのか、それともこれまで通り、欧州統合を引っぱり、開かれた世界を力強くめざす国であり続けるのか。

 その岐路に立ちながら、総選挙から4カ月以上、新政権ができずにいるのは残念だ。欧州と国際社会のためにも、政治空白を早く終わらせてもらいたい。

 メルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟は今月、社会民主党との連立交渉にめどをつけた。来月に結果が出る社会民主党の全党員投票で、過半数が賛成すれば正式に決まる。

 すでにメルケル氏の求心力は低下し、社会民主党の若者らには反発が強い。だが、ここは、社会民主党らしい寛容さを政権運営に生かすときだ。

 2党の連立は選挙前と同じだが、状況は一変した。米国やフランスなどで露呈したグローバル化への反発、既成政治への怒りの流れは、ドイツも例外ではないことがはっきりした。

 連立交渉でメルケル氏は、働き方の制度や医療保険改革などで、「弱者寄り」の政策を一部受け入れた。格差の改善に力を入れるのは理にかなった判断だろう。

 「弱者」への目配りは、欧州連合の改革でも求められる。ギリシャやイタリアなどに対し、「財政規律」一辺倒だった要求を緩めることになろう。フランスとともに、ドイツには引きつづき統合の旗振り役を務めてもらいたい。

 振り返れば、ベルリンの壁が崩れたとき、人々は「対立の時代は去った」と信じた。だが今は、東欧や米国などで貿易や入国管理の「壁」が増えている。

 見えない壁に立ち向かう。その闘いはドイツだけのものではない。差別や格差など、あらゆる分断をなくす努力が、地域を問わず求められている。

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