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 天皇陛下の退位と新天皇即位に伴う儀式をどう執り行うか、政府が検討を進めている。

 昭和から平成への先例を踏まえ、憲法に整合し、皇室の伝統に即したものにするとの方針に異論はない。その中で最も重視すべきは憲法との関係である。改めて言うまでもない。

 前回の代替わりは象徴天皇制の下で初めての経験とあって、さまざまな議論をよんだ。

 即位を宣明する儀式や大嘗祭(だいじょうさい)に知事らが参列したことが、政教分離原則に反するかが争われた訴訟では、合憲判断が確定している。だが、その前提となる社会的・文化的条件は時代によって変わる。安易に踏襲することなく、儀式の内容を一つ一つ点検する姿勢が肝要だ。

 裁判にならず、最高裁の見解が示されていないものもある。例えばいわゆる三種の神器のうちの剣と璽(じ)(勾玉〈まがたま〉)が、公務に使う印鑑の御璽(ぎょじ)・国璽(こくじ)とともに新天皇に引き継がれる儀式は、国事行為として行われた。

 神話に由来し宗教的色彩の濃い剣璽承継が、なぜ国事行為なのか。政府は剣璽を「皇位とともに伝わるべき由緒あるもの」と説明し、宗教性を否定する。だが、問題を指摘する声は学界などに依然としてある。

 また、この儀式に立ち会った皇族は男性だけで、美智子さまをはじめ女性は排除された。政府は当時「昭和天皇が亡くなって早々の間に行われた伝統的儀式なので、出席をお願いしなかった」と国会で答弁したが、どれだけの人が納得するか。

 政府は時代にふさわしい姿を再検討し、考えを国民に丁寧に説明しなければならない。

 懸念すべきは、旧憲法を懐かしみ、天皇を神格化する空気が自民党内に根強くあることだ。

 最近も、天皇や皇太子の成年年齢を18歳と定める皇室典範の扱いが議論になった。天皇が未成年の場合に備え、摂政が公務を代行する期間を短くするための特例だが、18歳から成人とする民法改正案が成立すれば、この規定は不要になる。しかし保守派議員らの反発を踏まえ、典範改正は見送られそうだ。

 存廃どちらでも人びとの生活に影響はない。問題は、意味を失った規定を整理するという合理的な考えが退けられ、典範に手をつけるのは冒涜(ぼうとく)・不敬だとする言動がまかり通ることだ。戦前に重なる風景で、国民主権のもとに象徴天皇制があるという基本認識を欠く。

 危うい空気が漂うなかで進む代替わりに対し、憲法の原則や理念からの逸脱がないよう、目を凝らし続ける必要がある。

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