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 裁量労働制の対象拡大など、規制を緩和する部分を「働き方改革」法案から切り離す。現場の実態を調べ、国民が納得できる制度を練り上げる。

 政府はそう決断するべきだ。急がねばならないのは、残業の上限規制など働き過ぎの防止策である。

 あらかじめ定めた時間を働いたとみなす裁量労働の対象拡大について、野党が国会で追及を続けている。安倍首相が答弁を撤回するなど守勢の政府は、裁量労働拡大の実施を予定より1年遅らせ、20年4月にすることを検討し始めた。

 専門職で年収の高い人を労働時間規制から外す高度プロフェッショナル制度の創設も、合わせて1年遅らせるという。

 典型的な問題のすりかえであり、論外だ。問われているのは、大きな政策変更を拙速に進める政府の姿勢である。

 国会審議では、法改正を議論した労働政策審議会(労政審)に提供された基礎資料のうち、一般労働者の残業時間に関する一部で間違いがあることもわかった。野党は労政審の議論自体に疑問を投げかけ、政府は影響はなかったと反論する。

 だが、思い起こせば、議論の過程がそもそも異例だった。経営側が求める裁量労働拡大や高プロ創設について、労働側が長時間労働への恐れが払拭(ふっしょく)できないと最後まで反対したのを押し切り、「おおむね妥当」と結論を出した。

 労政審は本来、中立の立場の有識者と労使の3者が議論を重ね、合意を探る場だ。ところが裁量労働拡大と高プロ創設については、産業競争力会議や規制改革会議など政権肝いりの会議が、労政審に先立って方針を打ち出していた。

 首相は「裁量労働で働く方の労働時間は、平均的な方で比べれば一般労働者よりも短いというデータもある」との国会答弁を撤回した。その一方で、裁量労働の方が一般労働より長いという労働政策研究・研修機構のアンケート結果を強調する野党に対し、裁量労働に移行したことで長くなったことを示すものではないと反論する。

 確かにこの調査は、一般労働から裁量労働に変わった人の変化を調べたものではない。ならば、変化を調べるよう指示し、検討の手がかりとなるデータを集めるべきだろう。

 裁量労働をめぐっては、対象外の人に適用して残業代を支払わない例など、今もさまざまな問題が指摘されている。現状に向き合うことが出発点だ。なし崩しの拡大は許されない。

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