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 海外からの労働者を、必要な人数だけ多く受け入れる。家族と一緒では認めず、一定期間働いた後は帰国させる。

 安倍首相がそんな制度を作るよう指示した。外国人の大学教授や企業経営者、研究者らに絞って来てもらう「専門的・技術的分野」の在留資格について、その対象を広げたり基準を下げたりする考えだ。

 介護や農業などでの深刻な人手不足への対策だというが、あまりにご都合主義ではないか。外国人に働いてほしいのなら、生活者として受け入れ、家族とともに長く暮らしてもらうことを基本に考えるべきだ。

 外国人労働者は昨年10月時点で128万人で、この5年間で60万人も増えた。増加分のうち留学生のアルバイトなど「資格外活動」が18・8万人、技能や知識の習得を通じた国際貢献をうたう技能実習も12・3万人を占め、就労が目的ではない人が過半に及ぶ。

 政府も現状のいびつさを認めており、「就労目的の資格を見直す」ために「専門的・技術的分野」に注目したと説明する。職種ごとに備えるべき技能や語学力を見極めつつ、必要な人数を計算するという。

 同様の仕組みは海外にもある。なし崩し的に留学生・実習生に頼る現状を改めるのは前進だと評価する声も出そうだ。

 しかし今回の対応は人権上の懸念があるだけでなく、労働力確保への有効策にもならないのではないか。やはり期間限定の受け入れである技能実習制度をめぐる現場の声を聞くと、そう考えざるをえない。

 賃金や働く時間をめぐるトラブルが頻発する一方、実習生をきちんと処遇し育てる経営者も少なくない。一人前になったと思ったら帰国し、別の実習生探しに追われる状況を嘆き、改善を求める声が後を絶たない。

 高齢化と人口減が進む地方では、実習生は地域社会の貴重な一員でもある。溶け込んでは帰国するという繰り返しでは、地域づくりはままならない。

 安倍政権は、事実上の人手確保策として技能実習制度の拡充を重ねてきた。それが限界に達し、新たな策を考え始めたということだろう。しかし労働者の国際的な獲得競争が激化する中で、「日本が選ばれなくなってきた」との声が増えている。

 政権は「いわゆる移民は受け入れない」と繰り返す。首相は今回、「在留期間に上限を設け、家族帯同は基本的に認めないのが条件」と強調した。しかし、より柔軟で開かれた受け入れ策を考える時ではないか。

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