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 米国が「安全保障上の脅威」を理由に、鉄鋼などの輸入制限を検討している。

 世界一の経済大国が一方的に高関税をかけるようなことをすれば、混乱は必至だ。相手国が報復措置をとり、貿易戦争にもなりかねない。日本は欧州と連携して、米国に輸入制限を自制するよう強く求めるべきだ。

 今回の措置は、米通商拡大法232条に基づき、ロス商務長官がトランプ大統領に提案した。鉄鋼については、中国など12カ国を対象に最低53%の高関税をかける案や、すべての国に追加関税をかけたり、すべての国からの輸入量を制限したりする案を示した。

 具体的にどう対応するかは、大統領が4月中旬までに決断する。232条に基づく輸入制限を発動すれば、82年のリビア産原油に対して以来という異例の事態である。

 世界貿易機関(WTO)は一方的な輸入制限を禁じているが、安全保障が理由であれば例外を認めている。ただし、それは戦時のような緊急事態などを想定してのことだ。

 米商務省は今回、輸入の増加などで米国内の製鉄関連施設の閉鎖が進めば、非常時に求められる鉄鋼を供給できなくなる恐れを指摘し、措置を正当化しようとしている。

 しかし、こうした理由による輸入制限が認められれば、後追いする国が相次ぎ、自由貿易体制は成り立たなくなる。

 米国が輸入制限を検討したのは、中国を念頭に置いてのことだった。世界の粗鋼生産の半分を占めるに至った中国がさらに過剰に生産し、鉄鋼市場は確かに混乱している。

 だが、米国はすでに反ダンピング関税などをかけており、中国からの輸入は激減している。新たな輸入制限は、ラストベルト(さびついた工業地帯)の支持者へのアピール色が濃い。

 ただ、今回の措置は政治的なパフォーマンスにとどまらず、実害を伴う。輸入制限を発動すれば、米国の主な輸入先であるブラジル、韓国などに打撃を与え、日本やドイツにも影響する可能性がある。

 欧州や中国などが米国を批判しているだけではない。米国内でも、鉄鋼を使う自動車メーカーなどは反対している。輸入価格が上がれば、米国の消費者と経済に悪影響が及びかねない。

 中国の過剰生産への対応は、すでにG20などで協議し、中国も協力する姿勢を示している。いま、米国がなすべきことは、鉄鋼市場の安定に向けた国際協調を主導することだ。

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