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 自民党の憲法改正推進本部がきのう、党所属の国会議員に募った9条改憲案を議論した。

 戦力不保持と交戦権の否認をうたう2項を残すか削るか。加える文言は「自衛隊」か「自衛権」か。100人以上が寄せた案は約120にのぼった。

 まず驚かされるのは、その性急さだ。わずか3週間で募集した案をもとに、約1カ月後の今月25日の党大会までに条文案をまとめたいという。

 これが憲法を改めようという議論のあり方か。

 推進本部は、安倍首相が提唱した2項を維持する自衛隊明記案で議論を集約する構えだ。

 だが9条をめぐるこれまでの議論には、理屈の通らないことが多すぎる。

 現職自衛官が安全保障関連法を違憲と訴えた裁判で、集団的自衛権が行使できる「存立危機事態」について、国は「国際情勢に鑑みても発生を具体的に想定しうる状況にない」と主張した。北朝鮮の脅威を強調し、安保法を正当化してきた首相の発言とどう整合するのか。

 そもそも何のための改憲なのか。肝心のそこが分からない。

 自衛隊が違憲だという論争がある状態に終止符を打ちたいと首相はいう。しかし首相自身も認めるように、歴代内閣は一貫して自衛隊を合憲とし、国民の多くも支持してきた。

 首相はまた、自衛隊を明記してもその任務や権限は変わらないとし、自衛隊明記案が国民投票で否決されても自衛隊の合憲性は変わらないともいう。

 ならば改憲の必要はない。

 根本的な疑問に説得力ある答えを示さぬまま、しゃにむに結論を急ぐ。そんな自民党の改憲論議におよそ理はない。

 推進本部特別顧問の高村正彦党副総裁が改正憲法の2020年施行についてこう語った。

 「これは安倍さんの願望だ。圧倒的多数を持っている政党の党首の願望であり、それなりの重みを持った願望だ」

 秋の自民党総裁選での3選を視野に、東京五輪のある20年に向け、自らの首相在任中に改憲を実現したい。そのためには2項削除論より、公明党の協力や国民投票での賛成を得やすい案がいい――。

 それが首相や党幹部らの本音なのではないか。

 戦後70年にわたり、積み重ねられてきた歴代内閣の憲法解釈や国会での議論を軽んじ、「首相の願望」をかなえやすい改憲案を選ぶ。

 だとすれば、自民党のそうしたやり方を、責任ある憲法論議と呼ぶことは到底できない。

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