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 トランプ米大統領が、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)氏との首脳会談を計画していることを明らかにした。韓国高官が金氏の要請を伝えたのに対し、前向きに応じた。

 現職の米大統領と北朝鮮首脳が直接会談した例はない。もし実現すれば、朝鮮戦争以来続く敵対の歴史の節目となろう。

 最高指導者に権力が集中する北朝鮮の体制を考えれば、重要な懸案を前進させるためにトップ会談をすべき時が来るのは確かだ。米朝が少しでも緊張をほぐし、和平へ向けて直接対話を進めるのは望ましい。

 ただ、積年の問題は複雑であり、打開には相応の時間と調整を要する。短兵急に事を運べば禍根を残す危うさがあることも、米政府は心得るべきだ。

 首脳会談は今後の米朝協議の先にめざすべき一つの到達点ではあるが、会談そのものを目的にしてはならない。単なる政治ショーにせず、着実に非核化を導く展望が伴う必要がある。

 北朝鮮は昨年、「国家核武力の完成」を宣言した。米国との首脳会談が実現すれば、核保有路線の正当性を最大の成果として強調するだろう。会談をそんな舞台にしてはなるまい。

 金正恩氏は韓国高官らに、非核化に取り組む考えや今後、核とミサイルの実験を凍結すると約束したという。だが、北朝鮮が考える非核化の範囲や、どんな行程で実現するかなど肝心なことは何も見えていない。

 そもそもトランプ政権は、いまだに包括的な朝鮮半島政策を練る態勢ができていない。国務省の東アジア担当官も、北朝鮮政策の実務専門官もそろっていない。その異常な状態を解消するのが必須条件である。

 北朝鮮のミサイルはすでに日韓を射程に収める。米国が自国の安全のみを優先するようでは同盟関係は揺らぐ。日本や韓国への丁寧な説明と政策のすり合わせを進めてもらいたい。

 米朝の間では00年に、敵対関係の終結を宣言する米朝共同コミュニケが発表された。これら過去の合意を土台に、非核化とともに、休戦状態のままの朝鮮戦争を終わらせ、恒久的な平和体制を築くための協議も進めるべきだろう。

 日本政府は米韓とくらべ、北朝鮮の対話攻勢に懐疑的な姿勢を崩していない。安倍首相は来月に訪米し、トランプ氏と話し合う予定という。

 圧力一辺倒で突き放すだけでは、北朝鮮と米韓が直接向き合う今の情勢に対応できない。米韓の対北交渉に日本も当事者意識をもって積極関与する柔軟さが求められている。

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