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 東日本大震災からの復興に、どう取り組むか。震災から3カ月後に制定された基本法の第2条「基本理念」に、こうある。

 「単なる災害復旧にとどまらない」「21世紀半ばにおける日本のあるべき姿をめざして」

 だから、復興は過疎地の再生の先進例になると期待された。

 宮城県の東松島市や山元町は、内陸に移設されたJRの駅前に住宅街を集約した。

 被災企業をまとめて設備の復旧を助けるグループ補助金や、仮設商店街の公設民営方式など新たな施策も編み出された。

 だが、多くの現場で目についたのは「省庁縦割り」「ハード事業優先」「既存の制度本位」という旧来型の手法だ。

 大震災を機に制定、改正された法律は70を超える。建築制限や土地収用の特例、被災者支援など多岐にわたるが、部分的な手直しがほとんどだった。

 それで間に合う被害ではなかった。地域の広さと深刻さ、被災者の数とも想定を超えた。

 被災地の実情に即し、従来の発想にとらわれない新たな具体策が要る。それが「3・11」の大きな教訓だ。

 ■空き目立つ造成地

 三陸沿岸に空き地が広がりつつある。盛り土や宅地造成が完了しても、利用されるあてがない土地だ。

 岩手県陸前高田市。かさ上げが進む約50ヘクタールの宅地のうち、6割の利用計画がまだない。釜石市や大槌町も状況は似ている。7年の歳月が、元には戻らない道を地権者に選ばせた。

 市街地が丸ごと津波に襲われる事態を想定した対応策はなかった。複雑な土地の権利関係を崩さず、現地で街を再建する方策として用いられたのが土地区画整理事業だった。

 経済成長を前提に、土地の形状を整え、道路や公園をつくって価値を高める事業である。速さが求められる復興、しかも過疎地には向かない。

 懸念は強かったが、他に適当な制度もない。採用された地域は岩手、宮城、福島3県の50カ所、1400ヘクタール余に及ぶ。

 宮城県石巻市の半島部では、空き区画が目立つ宅地が続出している。沿岸部で被災した集落を内陸や高台へ移す防災集団移転促進事業の難航の跡だ。

 被災地の買い上げと移転先の造成、建築費補助などをセットで支援する。50年近く前にできた制度だが、大規模災害で適用されたのは初めてだった。

 被災者は仕事や家族などにそれぞれの事情を抱え、時の経過とともに人生設計の決断を迫られた。移転先の変更が相次いだのもやむをえまい。

 過疎地の市街地や集落をすみやかに再生させる、新次元の制度が必要なのは明らかだ。本格的な検討が進んでいないのは、行政の怠慢というしかない。

 ■「現物支給」いつまで

 被災者の「多さ」も、復興の問題点を浮かび上がらせた。

 たとえば、行政が被災者に必要な物品をそろえて提供する「現物支給」の原則だ。戦後の物資が調達しにくかったころの名残である。

 いまは違う。金銭で補助する方が効率的な事例は多い。

 代表例が仮設住宅だろう。行政が発注して建てるほか、住宅を借りあげる「みなし仮設」がある。膨大な手続き事務に手間取り、かえって復興が遅れたと批判された。

 会計検査院は12年に、被災者に家賃を補助する金銭支給方式を提言している。

 南海トラフ地震の最悪の想定では建物の全壊・焼失が238万棟を超える。首都直下型地震も61万棟にのぼる。「現物支給」が通じるはずもない。

 モノからおカネに。

 支援のあり方を大胆に転換するべきだ。

 ■財源の使い方見直す

 阪神大震災の後、議員立法で生まれた被災者生活再建支援法も見直しが必要だ。

 住宅の再建に最大300万円を受け取れる制度で、広く活用されている。しかし、対象は住宅の全壊と大規模半壊だけで、半壊や一部損壊では一銭ももらえない。

 この線引きは厳しすぎる。損壊の程度をたとえば10段階で判定し、きめ細かく資金を援助するような工夫ができないか。

 仙台弁護士会はことし2月、支援金の増額を提言し、500万円にするよう求めた。被災地で実際に要した修繕費を基準にしたという。

 仮設住宅は建設から撤去までで1戸あたり1千万円、公営住宅には2千万円かかる。500万円でもとの家に住めるなら効率的だと唱える。

 課題は財源だが、これまでに支出された支援金は計3460億円だ。復興財源の10年間分の総額32兆円の1%ほどにすぎない。財源の使い道を見直せば対応できる。

 大震災の教訓に学ぶため、改めて現場に目をこらし、被災者の声に耳を傾ける。そこから新たな制度づくりを始めよう。

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