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 「事故から7年ではなく、まだ事故が続いている」。原子力規制委員会の更田(ふけた)豊志委員長は先週、会見でこう強調した。

 史上最大級の原発事故を起こした福島第一原発は、表面上は落ち着きを取り戻したように見える。原子炉建屋周辺を除き、構内のほとんどの場所に防護服なしで入れるようになった。

 炉心から溶け落ちた核燃料(デブリ)やプール内の使用済み燃料を冷却する手段も確立し、再び大量の放射性物質をまき散らすリスクは相当下がったと規制委はみている。

 だが、廃炉への道のりは「山頂が見える状況ではなく、しかもどのぐらいの勾配が待ち受けているかもわかっていない」(更田氏)のが実情だ。

 政府は昨年、廃炉の工程表を改訂した。「30~40年で廃炉」との大目標は維持したが、1、2号機のプールからの燃料取り出し開始は23年度へ3年遅らせた。炉心周辺はぼんやりと様子がわかってきたに過ぎず、デブリを取り出す具体的な工法の決定も19年度に1年先送りした。

 時間がたつにつれて、タンク850基、100万トンに達した放射性物質を含む水はさらに増えていく。廃炉費用が膨らむと国民負担にはね返る。しかし、むやみに急げば作業員の被曝(ひばく)や事故のリスクは大きくなる。

 東京電力は昨夏から、作業上のトラブルを「不適合」として公表している。作業員のけがや急病、複数の作業が同時に進む中での車両の衝突、応急措置機器の劣化など、法令には触れない事例が中心だが、毎日のように問題が報告されている。

 まずは作業員の安全を確保する。その上で、環境汚染リスクを低減させつつ、廃炉を着実に前へ進める。そんな多角的な目配りが重要になる。周辺住民や国民に状況を説明し、その声に耳を傾けることも欠かせない。

 だが、内外の有識者による東電の原子力改革監視委員会や規制委からは、東電が収益優先に傾くのではないかと懸念する声がたびたび漏れる。

 実質国有化で救済された東電にとって、第一原発廃炉は最優先で向き合うべき課題だ。人材と資金をしっかり投入することは、事故を起こした事業者としての当然の責務である。

 安倍首相は13年の五輪招致演説で、第一原発の汚染水について「アンダーコントロール(管理下にある)」とアピールした。しかし、その後の汚染水対策の難航ぶりを見ても楽観は許されない。東電と、東電を指導監督、監視する経済産業省や規制委は肝に銘じてほしい。

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