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 トランプ政権の発足から1年以上、米国と世界のかかわりが今後どうなるのか。ますます見えにくく、混沌(こんとん)としてきた。

 米外交の司令塔であるはずのティラーソン国務長官が、解任される。トランプ大統領のツイッターで本人も初めて知ったという唐突な更迭である。

 後任のポンペオCIA長官をトランプ氏は「波長が合う」と評し、ティラーソン氏については「考え方が違った」と語った。大国の外交トップが場当たり的な人事で簡単にすげ替えられる現状に慄然(りつぜん)とする。

 トランプ氏は、旧来の国際枠組みよりも自国の都合を優先する「米国第一」主義を掲げる。それに対し、ティラーソン氏は国際協調と自由貿易を重んじ、たびたび衝突してきた。

 米国が抱える国際的な課題の多さと重責を考えれば、政権の中で異なる政策の持ち主が競い合うのは望ましいはずだ。かつて国難に直面したリンカーン大統領が、対立する論者を重用したのは知られた逸話である。

 1970年代の米中国交正常化のように、強い指導力で外交に突破口を開いた例はある。ただ、それもキッシンジャー氏のような有能な人材の息長い働きが支えてこその成果だった。

 トランプ政権下では、大統領補佐官や閣僚らがめまぐるしく解任・交代している。今月はコーン国家経済会議議長が辞めており、マクマスター大統領補佐官やケリー首席補佐官をめぐるうわさも絶えない。

 大統領の激情に駆られた人事が続く一方、国務省や司法省、情報機関といった主要な政府機構の士気が損なわれているとの指摘も多い。米政府全体の機能低下が深まれば、世界にとっても深刻な懸念材料だ。

 この状況下でまず不安視されるのは、トランプ氏が計画している米朝首脳会談である。北朝鮮やアジア政策に精通した人材が乏しいままで、会談の実現を急ぐのは極めて危うい。

 トランプ氏もポンペオ氏も、朝鮮半島の非核化と安定への道筋を描くために、まずは大統領府と国務省の本来の態勢を整えるのが先決だ。北朝鮮問題を含むアジア政策の専門家チームを組み、指針を練るべきだ。

 イランの核問題など中東問題や、米中関係への余波についても懸念が尽きない。国際社会は国連など、あらゆるチャンネルを通じて米政府に国際協調の価値を訴え続けるべきだろう。

 とりわけ米国との同盟国である日本や欧州諸国には、信頼と安定の外交をトランプ政権に求める説得に動いてもらいたい。

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