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 自民党の9条改憲の条文案づくりが大詰めを迎えている。

 党憲法改正推進本部の執行部は、25日の党大会までに、安倍首相が唱えた自衛隊明記案で意見集約しようと議論を急ぐ。

 理解に苦しむ情景である。

 与野党を問わず国会議員がいま、注力すべき喫緊の課題が改憲なのか。そうではあるまい。

 森友学園をめぐる財務省の公文書改ざんを受けて、混迷する政治と行政をどう立て直すか。それこそが最優先だ。

 改ざん問題は、憲法の基本的な原則を侵し、民主主義の土台を壊した。

 行政府が1年以上にわたって立法府を欺いた。国会の行政監視機能は空洞化した。「全体の奉仕者」と憲法にうたわれた公務員のあり方は深く傷ついた。

 改憲を論じる前にまず、目の前の憲法の危機を正さねばならない。その真剣な政治の営みなくして、失われた国民の信頼は取り戻せまい。

 だが自民党は森友問題の真相究明には後ろ向きなまま、改憲条文案づくりに前のめりだ。

 条文案の中身も、期限を切って結論を急ぐ進め方も、首相の願望に沿って決められてきた。

 秋の自民党総裁選での3選を前提に、東京五輪のある2020年に向けて、自らの首相在任中に改憲を実現したい――。

 だが改憲案の発議は、憲法が唯一の立法機関たる国会に委ねた権能である。それを行政府の長である首相が主導するのは、三権分立への基本的な理解を欠くと言わざるを得ない。

 憲法は国の最高法規である。歴代内閣の憲法解釈や国会での議論の積み重ねもある。改憲をめざすなら、その改憲がなぜ必要か、丁寧で説得力ある議論を深め、多くの政党と国民の理解を得ることが欠かせない。

 だが、自民党のやり方は極めて性急だ。きのうの推進本部の会合で示された七つの条文案はいずれも生煮えだった。

 このうち首相の主張に近く、執行部が推すのは、戦力不保持と交戦権否認をうたう2項を維持し、「必要最小限度の実力組織として、法律の定めるところにより、自衛隊を保持する」といった条文を加えるものだ。

 首相は自衛隊を明記しても「任務や権限は変わらない」と主張しているが、同意できない。法律の書き方しだいで、なし崩しに任務が拡大する可能性があるからだ。

 憲法論議を否定はしない。だがいま拙速に、改憲に動くべき時なのか。政治の優先順位をどこに置くのか、自民党の判断力が試されている。

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