[PR]

 朝日新聞社のベンチャー投資子会社「朝日メディアラボベンチャーズ」は、企業の立ち上げを支援する「朝日メディアアクセラレータープログラム」の成果発表の場である「デモデイ」を5日に都内で開催した。プログラム参加企業が自社事業を紹介し、シンポジウムではベンチャー業界の潮流を探った。

 

 ■農家と消費者、ネットでつなぐ 鮮度・こだわりを付加価値に ビビッドガーデン

 農業支援ベンチャー「ビビッドガーデン」は、オンライン直売所「食べチョク」を運営する。登壇したCEO(最高経営責任者)の秋元里奈さん(27)は、取扱商品であるキャベツを抱えて事業の説明をした。

 「農家直送で鮮度が高い野菜を消費者に届け、生産者と消費者をつなげます」

 サービスは2017年8月にスタート。それぞれの農家が出品する少量多品種がパックになった「野菜ボックス」は中身も価格も多様で、消費者が選んで買う。速く配送できた場合、収穫から24時間以内の野菜が届く。配送料を加えるとスーパーなどよりやや割高だが、顔の見えるつながりが特徴だ。

 秋元さんの実家は神奈川県の元農家。子どものころから農業に興味があった。だが、農業は利益が上がりにくいことに問題意識も持っていた。大学卒業後に就職したIT大手DeNAを退職し、16年11月のビビッド社設立の前後から、全国の小規模農家を回った。

 自分で調べた有機農業の農家から次々に紹介を受け、東北から九州まで約50カ所を訪問。そこで見えたのは、「販路がない」という共通の課題だった。

 「お金をかけてホームページを作ったが集客につながらない」「農産物販売イベントに出ても、継続して買ってくれるお客さんを獲得できない」。JAなどを通せば大きな市場につながるが、選び抜いた肥料や栽培方法へのこだわりなどの付加価値は、価格に反映されづらい。生産者の思いも伝わらない。少量しかつくられない、独特の形の伝統野菜は市場に埋もれてしまうという問題もあった。

 現在、登録農家は全都道府県で100軒超。中には年に100種近くの野菜をつくる生産者もいる。信頼性を保つため、商品一覧には生産者名や商品へのこだわりを記したメッセージも添えられている。今後は生産者と消費者が直接対話するチャット機能、生産者お薦めの調理法の紹介なども計画。秋元さんは「利用者10万人超を目指したい。百貨店などに常設の販売場も設けたい」と話す。(小倉いづみ)

 

 ■マーケティング、AIで効率化 広告のデータ管理お任せ ロボマーケター

 「マーケティングを民主化し、業界の働き方を改革したい」。いつ、どのメディアにどんな広告を出すかといった判断が必要な広告の運用・管理を自動化するクラウド型サービス「Roboma」(ロボマ)を展開するRoboMarketer(ロボマーケター)の岡崎哲朗CEO(34)は思いを語る。

 ネット業界で働いて10年以上。メディア、代理店、広告主と、マーケティングに関するあらゆる立場を経験した。多くの広告予算を割く企業もデータの分析を手作業に頼る部分が多い。

 「慢性的な人手不足で消耗戦になっている」。手作業から解放されれば、その時間と労力を戦略立案などの業務に注げる。

 グーグル、フェイスブックなどの広告データをAI(人工知能)で横断的に瞬時に分析する。効率的な広告運用で顧客獲得率20%上昇、広告管理コストの80%削減を目指す。1月にテスト版を公開。広告出稿額が月に数百万~数千万円の企業が当面のターゲットだ。

 

 ■ターゲット絞り試供品配布 施設へ情報提供のシステム キャトル

 「消費者の購買を喚起するプラットホームになりたい」とキャトルの横町享之CEO(32)。メーカーにとってPRの常套(じょうとう)手段である試供品の配布の効率を高める事業「エアカタログ」を昨夏から運営する。

 例えば、美容品メーカーが新商品のターゲットを20代女性と想定。ホテルで試供品配布したいと考えた場合、その情報をエアカタログのシステムに入力する。すると、美容院、フィットネスジムなどすでに登録されている約1万5千の「施設」からホテルに絞って情報が提供される。宿泊体験プランを打ち出し、顧客満足度を上げたいなどと考えたホテルから申請があれば、試供品を送る。

 従来のように、街中で不特定多数に配るのではなく「属性が明らかな消費者に確実に届き、反応も得られる点でメーカーに利点がある」(横町さん)。受け取る顧客が商品を試すだけでなく、買うこともできる店舗も構えたいという。(本田靖明)

 

 ■低コスト・安全・迅速、投資手段の拡大に期待 ブロックチェーン・資金調達テーマにシンポジウム

 デモデイでは、ベンチャーの動向に詳しい専門家を招き、ブロックチェーンと新たな資金調達手法をテーマにシンポジウムを開いた。主なやり取りは以下のとおり。

 ――ビットコインなど仮想通貨の基盤技術である「ブロックチェーン」の可能性が注目されています。

 〈「ブロックチェーン入門」などの著書がある森川夢佑斗(むうと)・ギンコCEO〉 従来のお金の流れを大きく変える可能性がある。銀行など仲介者に頼った送金と異なり、直接送金できる仕組みのため、低コストで安全な取引を可能にする。Aさんが10ビットコインをBさんに送金した場合、口座の持ち主の匿名性は保たれた状態で、口座間の取引データが世界中のネットワーク参加者からチェックされる。

 ――仮想通貨で資金調達する「イニシャル・コイン・オファリング」(ICO)という手法も広がっています。

 〈米国のベンチャー投資に詳しい、投資会社ハイクベンチャーズの安田幹広ジェネラルパートナー〉 米国ではコダック社がICOを実施するなど大企業も取り組んでいる。不正取引に悪用される懸念から各国も規制を強めているが、新株発行よりも簡易な資金調達手段として定着しそうだ。

 〈森川さん〉 ICOには事業に共感してくれる投資家を囲い込めるメリットもある。企業の新たなコミュニケーション手段にもなるだろう。

 ――クラウドファンディング(CF)による資金調達も広がっています。

 〈投資型CF企業エメラダの澤村帝我(たいが)CEO〉 多数の投資家が増資を引き受ける株式投資型の仕組み。当社ではベンチャー企業からオンラインで相談を受け、その企業の情報を個人投資家に向けて開示して投資を募る。数百人から数十万円ずつ集めるので、億単位でも素早く調達できる。

 ――特に米西海岸で進んでいます。

 〈安田さん〉 オバマ政権時代の法改正で、オンラインでの投資募集が可能になった。米国のサイト「エンゼルリスト」は適格エンゼル(投資家)をリスト化し、資金を集める仕組み。17年5月時点で1400社が計約550億円を調達している。

 ――日本の状況は。

 〈澤村さん〉 15年の法改正まで不特定多数からオンラインで資金調達することに制限があった。個人がスタートアップに投資するという文化もなかった。これからの市場だ。

 〈実際に個人投資家から投資型CFで資金調達をしたベンチャー企業、ラントリップの大森英一郎CEO〉 ランニングを楽しい活動に、という理念に共感してくれる人から資金を集める狙いだった。知人に対しても「ファンドに投資を」と頼むのは、直接出資を呼びかけるより容易だった。

 

 ■国内外のベンチャー企業に出資

 17年度のアクセラレータープログラムを主催した朝日メディアラボベンチャーズは、朝日新聞社が同年4月に設立したCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)です。同年7月にはこのCVCが第1号ファンドを設け、グループ会社などからも出資を受けて国内外のベンチャー企業に出資しています。デモデイであいさつした朝日新聞社社長の渡辺雅隆は「変化の激しい時代は、挑戦する者にとってのチャンス。社内でも、挑戦しないことがリスクだと言っている」と、新たな取り組みへの意欲を語りました。

 

 ■2017年度のプログラム参加企業

 <企業名>ビビッドガーデン

 <代表者>秋元里奈

 <サービスの内容>有機栽培にこだわった農家の野菜を産地直送で買えるサイト「食べチョク」を運営

     *

 <企業名>quatre(キャトル)

 <代表者>横町享之

 <サービスの内容>試供品の配布効果を高めたいメーカーと各種施設をマッチングするサイト「エアカタログ」を運営

     *

 <企業名>teritoru(テリトル)

 <代表者>日置愛

 <サービスの内容>若い世代にシェアハウスの情報を提供するサイト「weeeks」(ウィークス)を運営

     *

 <企業名>教育図鑑

 <代表者>矢野一輝

 <サービスの内容>「我が子に合う教育を見つける」を目的に、学校や塾の詳細情報サイト「中学図鑑」「塾図鑑」を運営

     *

 <企業名>RoboMarketer(ロボマーケター)

 <代表者>岡崎哲朗

 <サービスの内容>クラウド型マーケティング支援サービス「Roboma」(ロボマ)で広告の運用・管理を自動化

こんなニュースも