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 ドイツの新政権不在の事態がやっと終わった。左右中道の2大政党が引き続き連立し、4期目のメルケル政権が発足した。

 戦後最長の半年近くに及んだ政治空白はドイツだけでなく、欧州が直面する様々な課題の難しさを映しだした。難民・移民の流入をどうするか。欧州連合(EU)をどう立て直すか。

 この12年余、安定した手腕を見せたメルケル氏だが、これからが最も厳しい政権運営となろう。広がる自国第一主義の波に屈することなく、欧州と世界の利益を見据える大局的な指導力を貫いてほしい。

 昨秋の総選挙では、反難民・反イスラムの新興右翼の政党が躍進した。それに動揺した既成政党の連立交渉は難航し、一時は再選挙も取りざたされた。

 今回、社会民主党が不満を超えて政権入りを選んだのは、再選挙で右翼勢力のさらなる伸長を恐れたためだ。結果的にEUにとっては「親欧州路線」の好ましい組み合わせとなった。

 ただ、連立協定書は、欧州政策を新政権の核のひとつとしているが、具体策の記述はない。新政権内で意思統一ができていないからだ。

 マクロン仏大統領が提案するユーロ圏の共通予算や財務相ポストづくりなどへの姿勢もあいまいだ。独仏が両輪となって反統合派を押し返し、EUを再建するための道筋が見えない。

 記録的に低い失業率や高い株価を保つドイツ経済は、ユーロ圏で「一人勝ち」の状態だ。一方、ギリシャやイタリアなど債務に悩む国々には「緊縮疲れ」がめだち、ポピュリスト政党の人気につながっている。

 今月のイタリア総選挙でも、ユーロ懐疑派や反難民の政党が勢力を広げた。EUからの離脱を進める英国は、1年後の離脱後、移民流入を制限し、欧州の「単一市場」と「関税同盟」の両方から撤退する意向だ。

 このままでは欧州は、統合よりも遠心力が強まってしまう。ドイツはこれまでのように、債務の多い国に財政規律や改革を強いるだけでは求心力は取り戻せない。南欧などに寛容なソフト路線に転じる必要がある。

 米国とロシア、中国の独善的な大国外交もめだつ今、国際協調を重んじる秩序の行方が危ぶまれている。それだけにドイツとフランス率いるEUは、世界の期待をつなぐ存在だ。

 ドイツ国内にも強まる自国優先の国民感情と、欧州統合の推進役としての重責との間で、どうバランスをとるか。実に困難な局面だが、メルケル氏の賢明な踏んばりを望みたい。

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