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 春闘の回答が、大手企業を皮切りに出始めた。

 昨年をやや上回る傾向にあるが、月給でみれば組合側要求の4%賃上げに遠く及ばず、安倍政権が示した「3%以上」にも届かない水準だ。働き手への還元、デフレ脱却、将来の成長のいずれに照らしても、より力強い賃上げの流れが必要だ。

 連合のまとめによると、すでに回答を得た675組合の平均で、定期昇給を含む賃上げ率は2・16%。昨年同時点は2・06%だった。ベースアップ分が明確に分かる回答の平均では、ベア分は0・77%。足元の消費者物価上昇率を下回る。

 先月来、株価が一時下落し、為替も円高方向に振れた。だが、企業の収益は依然高い水準にあり、一方で働き手への配分割合は歴史的にみても低いままだ。失業率は下がり、人手不足感も強い。賃上げの条件はかつてなく整っている。

 経団連会長は、政府の経済財政諮問会議の有識者議員を務める。1月の会合に連名で出した提言では、最初にデフレ脱却の確実な実現をうたい、そのために「3%の賃金引き上げ」を盛り込んでいる。着実に実現しなければ、政策提言の本気度が疑われる。

 賃上げが物価上昇に届かないと、月給が実質的に目減りし、消費の足を引っ張りかねない。デフレ脱却を果たした後の経済では、物価上昇に見合った賃上げが基本のはずだ。経営者がベアを異例とする発想のままではデフレ脱却はおぼつかない。

 諮問会議での提言は、財政健全化にも言及した。税制改革は、法人税を下げて消費税を上げる方向で進んできた。減税の恩恵を企業が抱え込む一方で、消費が低迷を続ければ、税収に悪影響を及ぼしかねない。

 今春闘では、相場の形成役を担うトヨタ自動車の回答が遅れ、さらに「3・3%の賃上げ」としながらベアの具体額を公表しなかった。依然圧倒的な収益力を誇る企業の行動として、疑問が残る。

 春闘は、各労組が情報を共有することで交渉力を高め、社会的な注目のもとでの公正な賃金決定を促す仕組みとされる。組合外も含む多くの働き手に成果を広げる役割もある。

 デフレ下で弱まった働き手の立場を回復させるためにも、今はその力の発揮が一段と求められる。牽引(けんいん)役である連合の責務は重い。

 多くの企業では春闘はこれからだ。賃上げをさらに進め、中小企業や非正社員の賃金水準の底上げにつなげる必要がある。

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