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 高度成長期、企業は収益を重視して環境対策を怠り、行政も見逃した。その結果、公害によって大勢の人の命や健康が奪われた。この記憶を風化させてはならない。

 富山県の神通川流域で発生した「イタイイタイ病」の患者や遺族らが、上流の神岡鉱山を経営する三井金属を相手に損害賠償を求める訴訟を起こして、今月9日で50年になった。

 鉱山から流されたカドミウムに汚染された食べ物を口にした人が、次々と体調不良を訴えた。骨が弱り、重症者は寝返りでも骨折する。患者が「痛い、痛い」と叫んだのが由来だ。

 県が認定した患者数は200人。ほとんどは亡くなったが、今なお闘病中の人がいる。

 経済活動より大切なのは、人の健康と環境の保護である。そのことを改めて確認したい。

 地元の医師が「カドミウムが原因」と発表したのは1961年。しかし国は2年間、究明に本腰を入れなかった。

 農民らは川の水が白く濁るため、上流の鉱山の廃水の改善を求めた。それでも企業は動かず、医師の発表から7年後の68年3月9日、住民らが集団訴訟に踏み切り、その2カ月後に国はやっと公害だと認めた。

 企業側は72年の二審判決で敗訴し、賠償や土壌の復元を約束した。その後は被害者側の鉱山への立ち入りも受け入れ、汚染防止に努めた。企業が住民の声に耳を傾け、対策を講じていれば被害の拡大は防げただろう。忘れてはならない教訓だ。

 50~60年代、水俣病(熊本県、鹿児島県)、新潟水俣病、四日市ぜんそく(三重県)とあわせた四大公害病が顕在化した。共通したのは、汚染源を指摘されながら、加害企業が住民らの起こした訴訟で敗訴するまで責任を認めない構図だ。

 50年前、日本はGNP(国民総生産)が世界2位の経済大国となった。その陰で工場廃液やばい煙による環境汚染が深刻化し、健康をむしばんだ。

 ひとたび環境が破壊されれば復元に多大な時間と労力を要する。神通川流域でカドミウムに汚染された約1680ヘクタールの農地の復元には約40年かかり、やっと6年前に終わった。

 企業は国内はもちろん海外事業でも、公害を起こさないように尽力せねばならない。

 利益の追求を優先し、命や自然を軽視する風潮は、過去のものだと言い切れるだろうか。公害は人がつくり出した。戦後史の教訓を社会全体で共有、継承し、今に生かしたい。二度と悲劇を生まないために。

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