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 これが戦後日本の平和主義の根幹をなす9条を改めようとする議論のあり方なのか。そのずさんさにあきれる。

 自民党の憲法改正推進本部が、戦力不保持と交戦権の否認をうたう2項を維持したうえで、自衛隊を明記する改憲案を取りまとめる方針を決めた。

 安倍首相が提唱する案に沿った内容と言える。

 今後の扱いを一任された細田博之本部長は、自衛隊の定義として書き込むことが有力視されていた「必要最小限度の実力組織」の表現を削り、「必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、自衛隊を保持する」との条文を加える案を選ぶ意向を表明した。

 根本的な疑問がいくつもある。そもそも歴代内閣が合憲と位置づけてきた自衛隊を、憲法に明記するための改憲に、どんな必然性があるのか。

 首相は自衛隊を明記しても「何も変わらない」と言うが、そんな保証はどこにもない。安倍政権は、歴代内閣が憲法上認めなかった集団的自衛権の行使を、一内閣の閣議決定によって容認した過去がある。

 自衛隊が衆参両院や裁判所などと並ぶ機関として憲法に明記されることにもなる。防衛省より憲法上の位置づけが上になることが、自衛隊の任務と権限の拡大や防衛費の増額に影響を及ぼさないと言えるのか。

 こうした疑問について党内で詳細に検討した形跡はない。

 「必要最小限度の実力組織」という文言を削ったのは、25日の党大会までに党内の反対論を封じ込めるための対症療法に過ぎない。

 この文言があろうがなかろうが、どこまでが必要最小限度なのか解釈の余地が残り、法律次第で自衛隊の任務と権限が広がる可能性は変わらない。

 改憲より先に、政治がいま最優先すべき課題は他にある。

 森友学園をめぐる財務省の公文書改ざんは、立法・行政・司法が相互にチェックし、均衡をはかる憲法の基本原則を侵し、民主主義の土台を壊した。

 この目の前の憲法の危機を正すことこそ、与野党を超えた立法府の喫緊の課題である。

 改憲には多くの政党の熟議と国民の理解が不可欠だが、連立パートナーの公明党を含め多くの政党が、いま改憲を急ぐことには否定的だ。

 自民党はそれでも、首相が掲げる2020年の新憲法施行に突き進むのか。付け焼き刃の改憲論議の前に、立法府の一員としての責務を全うすべきだ。

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