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 人生の終わりに、本人が望む医療やケアを受けられるようにするための厚生労働省の指針が、11年ぶりに改定された。

 死をどう迎えるかは、個々の価値観にかかわる難しいテーマだ。だが団塊の世代が平均寿命に近づき「多死社会」に入ろうとするいま、避けて通れない課題になっている。改定を機に議論の深まりを期待したい。

 指針は、最期のあり方について家族や医療・介護の関係者らと話し合いをくり返し、文書に残すように提唱する。アドバンス・ケア・プランニング(ACP、患者の意思決定支援計画)と呼ばれる取り組みだ。いざというとき、自分に代わって治療やケアの検討をしてくれる、信頼できる人を決めておくことの重要性も盛り込まれた。

 一人暮らしや認知症の患者が増え、意思確認は難しくなっている。終末期には約7割の人が自分では物事を決められない状態になるとのデータもある。一方、医療現場からは「救急患者に延命治療をしたら、家族に希望とは違ったと言われた」といった戸惑いの声も聞かれる。

 こうした混乱を避けるためにも、例えば最期は自宅で過ごしたい、命を延ばすだけの治療は断る、逆にあらゆる手立てを尽くして欲しいといった意思を、家族や関係者で確認・共有しておくのは大切なことだ。

 ただ、留意すべき点がある。

 まず、本人の自発的な参加が大前提になる。死を考えることに、ためらいや不安、恐怖を感じる人も少なくないだろう。「まだ決められない」というのも大事な意思表示である。

 また延命治療といっても、心臓マッサージから人工呼吸器の装着、胃ろうなどによる栄養補給まで様々だ。本人が情報を正しく理解できていないとみられる段階で、選択を迫るようなことがあってはならない。

 厚労省検討会が昨年末おこなった意識調査では、最期を迎える場所を考える上で重要だと思うことに、約7割が「家族等の負担にならない」を挙げた。

 家族への配慮から、本当の思いとは違う考えを口にする事態も想定される。それを見極め、本人が望む医療やケアを実現するために、専門家も交えた話し合いを重ねる必要がある。

 まずはACPについての理解を深めることから始めたい。終末期に本人や家族らと協議した際に医療機関に支払われる「相談支援料」が、「国の医療費抑制がねらい」との批判を受け、凍結された過去もある。

 細心の注意を払いながら、息の長い取り組みが求められる。

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