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 北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)氏が中国の北京を訪れ、習近平(シーチンピン)国家主席と会談した。確認されている限り、最高指導者となった金氏が外遊するのは初めてである。

 中国側によると、金氏は会談で、平和と安定の維持を望み、朝鮮半島の非核化に尽力すると語ったという。2人は今後もひんぱんに会う意思を確認した。

 両国の対話が軌道に乗るのは望ましい。非核化と和平には、北朝鮮の最大の後ろ盾である中国の関与が欠かせない。

 「唇歯の関係」といわれるほど密接だった中朝関係は近年、冷え込んでいた。国連安保理での制裁決議に賛成した中国に、北朝鮮が反発したためだ。

 だが今回、中国を初の外遊先としたことで、金氏はひとまず中国に敬意を示したかたちだ。4月以降に見込まれる韓国、米国との首脳会談に向けて、足場を固めておきたい思惑があるのだろう。

 近年、孤立を深めてきた北朝鮮が対外的に意思疎通を図る姿勢に転じているのは確かだ。この変化を逃すことなく、着実に非核化の目標につなげたい。

 そのために関係各国は現時点で、北朝鮮への制裁の足並みを乱さぬよう心がけるべきだ。非核化の言葉は語られても、実質的な進展はまだ何もない現実を見落としてはならない。

 関係各国の利害の違いを突いて、二国間対話で連携を崩そうとするのは、北朝鮮の常套(じょうとう)手段だ。とくに大きな影響力を持つ中国は、今回の訪問などを理由に制裁を緩めてはならない。

 金氏は今後、別の友好国であるロシアのプーチン大統領にも会う可能性がある。北朝鮮をとり囲む構図が、かつての「日米韓」対「中ロ朝」に陥れば、問題の解決は難しくなる。

 金氏が後ろ盾の大国との関係固めに走るのは、米国との首脳会談が不調に終わる事態に備えてのことだろう。それだけに、米国は交渉に臨む政策と指針を綿密に練り、中国や韓国、日本を含む各国との調整を進めておく必要がある。

 ところがトランプ大統領はこの大切な時期に、一方的な通商政策で中・韓・日と摩擦をおこし、在韓米軍駐留の意義にも疑問を投げる発言をした。安全保障と貿易を関連させて「自国第一」に走る不安感を与えるのは不見識というほかない。

 北朝鮮をめぐる各国の首脳外交が活発化する中、日本政府の出遅れ感は否めない。圧力一辺倒に固執した結果ではあるが、焦るのは逆効果だ。関係各国が歩調を合わせつつ、対話を生かしあう知恵が求められている。

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