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 日本銀行の新執行部が発足する。副総裁2人が交代したが黒田東彦総裁は続投し、金融緩和の継続という政策の基本的な方向は当面、不変と見られる。

 だが、今後5年の任期の間には、重大な判断を迫られる局面がくるはずだ。日銀への異論や批判についても議論を尽くし、物価と金融システムの安定に万全を期す必要がある。

 直近の物価上昇率は1%で、エネルギー価格を除く「実力」では0・5%だった。徐々に上がってきたが、5年前に掲げた「2%」の目標には程遠い。

 懸念されるのは、足元の経済の好調がいつまで続くかだ。2月以降、金融市場は乱高下が続いた。米国の金利上昇を先取りした動きや、トランプ大統領の保護貿易的な政策への懸念に加え、北朝鮮問題など地政学上のリスクもある。

 景気拡大は長期化しており、やがて反転する可能性は拭えない。その場合、すでに異例の緩和を続けている日銀には、とりうる政策の余地が少ない。目標の達成がさらに遠ざかれば、信用失墜が避けられない。

 一方、順調に物価上昇が続いた場合は、いずれ金利を上げる「出口」の局面を迎える。大量の国債を抱え込んだ状態で、経済に混乱を与えずに対応できるのか、未経験の領域に入る。

 1980年代後半、日銀は低インフレの下で緩和的な政策を続け、その後、日本経済は激しいバブル崩壊に直面した。

 一方、00年と06年には、日銀は「デフレ懸念の払拭(ふっしょく)が展望できた」「物価のプラス基調が定着していく」として引き締め方向に転じた。だが、デフレからの完全脱却には至らなかった。

 中央銀行が判断を誤れば、代償は大きい。適切な政策決定に欠かせないのが、柔軟で幅広い議論と、国民への説明責任に対する自覚だ。

 日銀の政策委員会の現メンバーは、正副総裁を含め全員が安倍政権の下で選ばれている。その主張には共通点が多く、議論の幅が狭まる恐れがある。

 だからこそ、異論や疑問点を周到に検討することが不可欠だ。経済をめぐる国民の予想に働きかける政策をとっているだけに、人々の腑(ふ)に落ちる説得力がなければ、効果も減じる。政策変更に踏み切る場合も、事前に十分な議論を重ねていることが、柔軟な対応の支えになる。

 政策委員会の議論を活性化させ、外部の専門家と意見交換する機会も増やす。緩和の副作用や「出口」のあり方など、国民の不安に丁寧に答える。新執行部に、まずそのことを求める。

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