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 東京・日比谷に13のスクリーンを持つシネコン(シネマコンプレックス)がオープンした。戦前から映画街として知られた地区の新しい風景だ。

 映画館の形態はこの10年ほどで大きく変わった。シネコンが急増し、全国約580館の6割になった。スクリーンの数でいえば9割近くを占める。

 きれいで、便利で、話題作がそろう。一方で「どこも同じ」との印象もぬぐえない。

 そんななか細々とだが存在感を示しているのが、全国に90館ほどある、客席数200未満のミニシアターだ。

 特徴は上映作品の多彩さにある。大手が配給しないアート系やドキュメンタリー、若手作家の意欲作などを公開する。

 今年2月に開館50周年を迎えた東京の岩波ホールは、その草分けだ。これまでに56カ国の247本を上映。アジア、中東など、ほとんど紹介されていなかった国や地域のものも多い。

 「予想外だった」という成功は、「本当に見たい映画」を求める機運を生み、80年代以降、地方にも波及していった。

 いまミニシアターは、観客の動員数で上映の回数や期間が決まる、大手作品に飽き足らない層をつかむ。アニメ「この世界の片隅に」のように、ミニシアターで人気に火がつき、やがてシネコンにも広がっていくという回路も生まれている。

 トークショーや出張上映など観客との距離を縮めるイベントを重ね、市街地再生の中心になっている劇場もある。映画のネット配信サービスなどに対抗し、リアルな体験や対話、交流の場をめざす。

 大分市で「シネマ5」などを経営する田井肇さんは言う。「その映画、感動しますかと聞いてくるお客さんがいる。でも人生の意味は費用対効果とは違う。よくわからないけれど心に刺さる、そんな作品に出会える『磁場』でありたい」

 もちろん、いい話ばかりはない。経営は概して苦しい。

 そうしたなか群馬県高崎市は、地元映画祭から生まれたNPO法人が運営する「シネマテークたかさき」に、04年の設立当初から年120万円を出し、映画のまちのブランド作りに取り組む。市民の支持も高い。

 政府は東京国立近代美術館の一部門だったフィルムセンターを4月に独立させ、6番目の国立美術館とする。中央に核となる組織ができるのは結構だが、各地に多様な出会いの場があってこそ、文化は豊かになる。

 それぞれの地域の小さな空間が秘める可能性に期待したい。

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