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 これではギャンブル依存症が増える不安は消えない。カジノを含む統合型リゾート(IR)の実施法案について、与党の協議が決着した。政府は今国会での成立をめざすが、到底受け入れられるものではない。

 依存症患者を出さないためにどうすべきか。協議にはその大事な視点が欠けていた。

 たとえば日本人の入場料だ。自民が5千円以下、公明が8千円以上を主張し、結局、6千円に落ち着いた。シンガポールの8千円より安い。国民1人当たりの国内総生産(GDP)を踏まえたものだというが、どれほどの説得力があろうか。

 政府の当初案の2千円に比べれば抑止効果があるとしても、安倍首相が述べた「世界最高水準の規制」には遠い額だ。

 IRの設置数にも懸念がある。3カ所で合意したが、最初の認定から7年後に見直すとされていて、増える可能性がある。そうなれば依存症の増加への懸念も高まる。16年に成立したIR推進法の付帯決議に「厳格に少数に限ること」と明記されたのを忘れてはならない。

 ゆるすぎる、との指摘があった入場回数の制限「7日間で3回、28日間で10回まで」は、政府案のままだった。両党が法案の国会提出を優先し、とにかく着地点を探った印象だ。

 政府は30年に訪日外国人旅行者を6千万人、消費額を15兆円とする目標を掲げる。カジノはその目玉だという。だが入場規制などを厳しくすると、海外のカジノ運営業者にとって進出のうまみは薄れる。「世界最高水準の規制」が看板倒れになる矛盾は、当初からあったのだ。

 70年代にカジノが合法化された米ニュージャージー州のアトランティックシティーでは、大型カジノ施設ができた後、競争激化で閉鎖が相次いだ。街の活性化につながらず、貧困率も改善しなかった。韓国東北部のカジノ「江原(カンウォン)ランド」周辺では、地元住民の破産が増え、教育環境が悪化、人口が減少した。

 人の不幸を前提とするカジノが、浮揚策として本当にふさわしいか、誘致に熱心な各自治体は冷静に考える必要がある。

 与野党ともに、ギャンブル依存症対策の法案を準備している。急ぐべきはこちらの審議だ。ただしそれは、カジノ実施法案の露払い役ではない。

 まずパチンコや競馬、競輪など、現にある依存症の実態を明らかにして対策を練る。その上で、推進法制定の際にしっかり審議されたとは言い難い、カジノの必要性そのものについて、改めて議論を深めるべきだ。

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