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 旧優生保護法のもと、遺伝性の病気や知的障害などがある人に強制的に不妊手術が行われた問題で、厚生労働省が近く被害の実態調査を始める。

 障害者や支援者の団体が長年訴えてきた救済への取り組みが、ようやく動き出す。ただ、残された資料は乏しく、被害者らの高齢化で時間も少ない。

 ここは政治の出番だ。調査は与党ワーキングチーム(WT)が要請して決まったが、引き続き行政を主導するべきだ。

 まずは、難航が予想される調査をどう進めるかである。

 旧厚生省の統計では、都道府県の審査会での検討を経て、本人の同意なしに手術を強いられた男女は約1万6500人。朝日新聞社が調べたところ、個人を特定できる資料が残るのは2割にとどまる。保管期限を過ぎ、廃棄されたようだ。

 都道府県をはじめ、医療や福祉、教育機関の関係者らに広く手がかりを求める作業が急務だ。さらに、同意があった人を含めると2万5千人にのぼり、無理やり同意させられた人もいるという。被害者がどのような状況に置かれていたのか、全容の解明に努めねばならない。

 参考になるのが、ハンセン病問題での対応だ。

 国は1900年代初めに法律を作り、患者の隔離を開始。2001年の違憲判決を受けて、当時の小泉内閣が控訴を断念し謝罪と補償を表明した。

 その際、被害者の代表に生命倫理や人権の専門家、弁護士らを加えた第三者機関が設けられ、資料を読み解いたほか、被害者らへの聞き取りを重ねた。多角的に調べた結果、被害の実態がわかっただけでなく、被害を生んだ過程の解明や再発防止に向けた提言につながった。

 今回も政府から独立した調査・救済委員会をつくり、幅広く知見を集めるのが有効ではないか。与党WTは、別に発足した超党派の議員連盟とも連携し、政府に求めてはどうか。

 今年になって強制不妊手術問題が動き出したのは、宮城県の60代女性が国家賠償訴訟を起こしたのがきっかけだ。国はこれまで「当時は適法だった」と繰り返し、被害者の声に向き合おうとしてこなかった。まさに行政の限界である。

 戦後まもなく議員立法で作った法律が、多くの人生を踏みにじった。人権侵害との批判を受けて20年余り前に法が改正された後も、問題は放置された。

 与党WTは、来年の通常国会に議員立法で救済策を提出することを念頭に置く。政治の責任を強く自覚し対応してほしい。

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