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 現実をふまえない現場介入はやめるべきだ。

 東京都足立区の中学校が3月に、当時の3年生に性教育の授業をした。「産み育てられる状況になるまで性交を避けて」と説く趣旨だった。ところが一人の都議がこれを問題視して議会で質問し、都教育委員会が区教委を指導する事態になった。

 学習指導要領にない「性交」「避妊」などの語句を使ったのは不適切だ。性交を助長する可能性があり、発達段階にふさわしくない――との理由だ。

 的外れと言うほかない。

 高校生になると人工妊娠中絶の件数がはね上がることは、厚生労働省の統計から明らかだ。16~49歳を対象とした日本家族計画協会の意識調査では、「避妊法は15歳までに知るべきだ」と考える人が7割に及ぶ。卒業を控えた3月は、避妊の重要さを教える適切な時期だ。

 東京都と足立区だけの問題ではない。性教育のあり方を改めて考える機会にすべきだ。

 たしかに中学の指導要領は性交を扱っていない。ところが、性感染症の防止にコンドームが有効なことは教えよと解説に書く。言葉を使わずに、どうやって理解させろというのか。

 多くの国では義務教育の期間中に、もっと具体的に、わかりやすく教えている。オブラートに包んでいては、未成年の妊娠リスクの重さは伝わらない。

 全国の公立高で妊娠・出産を理由とする自主退学が15~16年度に674件あったことが、先ごろ報道された。うち32件は学校側の勧告によるという。

 出産しても通学を続けられる環境を整えるのが教委と学校の務めであり、退学勧告が理不尽なのは言うまでもない。

 同時に、早すぎる妊娠・出産が学業や進路の選択を狭め、貧困に陥る危険を高めることは、きちんと教えねばならない。自分を大切にするために、性に関する知識は欠かせない。

 今回と似た事例が15年前にもあった。同じ都議らが旧都立七生(ななお)養護学校の性教育を非難し、都教委は教諭らを「指導要領に反した」と厳重注意した。

 その当否が争われた裁判で、東京高裁は都議や都教委の行動の一部を違法と判断。性教育一般についても、生徒らの意識や社会状況を踏まえ「従来に比べてより早期に、より具体的に指導することが要請される」との考えに理解を示している。

 ネットで簡単に雑多な情報が手に入る時代だ。誤った、ゆがんだ知識から子どもたちを守るために、学校で正確な知識を授ける。それが大人の責務だ。

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