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 問題解決への展望を欠く無責任な武力行使である。長い内戦の混迷を、大国の軽率な行動でさらに悪化させかねない。

 米軍が英仏と共同でシリアを攻撃した。トランプ大統領は演説で、シリア軍が化学兵器を使ったと断じ、今後の使用を抑止するためだ、と主張した。

 確かに化学兵器の使用は、許されない犯罪である。しかし、米英仏はその証拠を示すことなく、国連安保理の同意もないまま攻撃に踏み切った。国際法上、正当性に疑義がある。

 そもそもこの行動には、シリアの戦乱を収めるための外交戦略が伴っていない。特定の兵器に絞った単発的な「懲罰」であり、流血の停止と秩序の回復という本来の目標が見えない。

 トランプ政権は1年前にも、化学兵器を理由に空爆した。しかし、事態は何も改善しないまま内戦がつづき、国民の犠牲は増え続けた。

 今回の攻撃規模は昨年の2倍というが、これでアサド政権が戦闘を終えることはあるまい。むしろ、後ろ盾であるロシアと米英仏の対立が決定的になったことで、シリアの和平はさらに遠のくおそれが強い。

 攻撃に出た米英仏は、和平づくりの重責を負うことを自覚すべきだ。今後再び事態を等閑視する姿勢に戻るようでは、ご都合主義のそしりを免れまい。

 一方、ロシア政府は「相応の結果なしには済まされない」と反発している。だが、アサド政権を軍事的な肩入れで増長させたのはロシアであり、国際的な非難には十分な理由がある。

 化学兵器をめぐる国連の協議でも公正な調査を阻んでいる。アサド政権を通じて中東での影響力を広げ、ロシアの軍事拠点を維持したい思惑もみえる。

 そんな大国のエゴを続ける以上、ロシアへの国際社会の警戒感が高まるのは当然だ。米国などへの報復行動は避け、自制すべきである。

 シリアだけでなく、朝鮮半島やウクライナ、イランなど多くの地域の問題で、米ロの緊張が影を落としている。双方の自国第一主義のために、国際社会は新たな冷戦のような時代の到来をおそれている。

 関係国の指導者は、狭い思考に陥ってはならない。シリアを含む失敗国家や地域の荒廃は、難民やテロなどの形で地球規模の問題をもたらしている。

 安倍首相は今回の武力行使に「理解」を示したが、追認するだけの姿勢は不適切だ。今週の日米首脳会談などを通じ、トランプ氏に中東の安定化への真剣な努力を促すべきである。

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