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 ■カルビーポテト フィールドマン(32歳)

 見渡す限りの畑が広がる北海道・十勝地方で、農家にポテトチップスなどに使うジャガイモづくりを指導する。肩書は「フィールドマン」。65人を担当し、年約1万トンの栽培に関わる。ポテチに換算すると約4500万袋分だ。

 勤め先はポテチ最大手カルビーの子会社。ジャガイモの仕入れを担い、年約30万トンを調達する。

 栽培の鍵は土壌にある。肥料と収穫量の関係を記録した過去約30年分のデータをもとに、作付け前に土壌を分析。それぞれの畑に合った肥料の組み合わせを考え、土壌をつくる。

 「土に詳しくなれば、より高品質のジャガイモがつくれるはずだ」。仕事の合間に独学を重ねて昨年2月、一般財団法人「日本土壌協会」が定める「土壌医2級」の資格を取得。「土壌診断の処方箋(せん)を作成できる」とのお墨付きを得た。来年は「学者並み」とされる1級の取得をめざす。上司の白井亮一さん(44)は「自ら学ぼうとする姿勢はピカイチ」と太鼓判を押す。

 4月下旬の作付け後は、毎日のように畑を巡回する。わずかに葉が変色していれば、弱っているサイン。すぐに農家に知らせて、追加の肥料をまいてもらう。複数の畑で豆や小麦などを同時に育てる農家は、畑の片隅で起きる小さな変化に気づきにくい。ジャガイモのスペシャリストとして、9月の収穫まで農家を支援する。

 収穫後も腕の見せどころだ。大量のジャガイモの貯蔵を一手に担う。

 掘りたてのジャガイモは温度が高く、そのまま保管すると加工時に邪魔になる芽が出てしまう。一方、温度を下げ過ぎると、でんぷんが分解されて糖分になり、揚げたときに焦げができる原因になる。一部のジャガイモをすり下ろして医療用の血糖計測器で糖度をチェックしながら、「企業秘密」の適正温度まで、徐々に冷やしていく。0.1度単位の細かい作業だ。

 ジャガイモは光を浴びると変色するため、貯蔵庫内は真っ暗。ヘルメットのライトを頼りに、状態を確かめる。異常な臭いがしないか、やわらかくなっていないか――。腐敗は短期間で広がるため、長いときは4時間かけて2カ所の貯蔵庫を慎重に見回る。

 全てのジャガイモが出荷されるまでは約9カ月間。「作付けから見守ってきたジャガイモを無事に見送ると、安心感と寂しさが同時にこみ上げます」

 「農業に関わる仕事がしたい」とこの世界に飛び込んでから、忘れられない出来事がある。

 2016年夏、収穫期直前の十勝地方を台風が襲った。ふかふかの土が洪水に流され、ジャガイモが地上に露出。日光にさらされて緑色に変色した。担当地域の収穫量は、例年より約2割減。翌年春、ポテチは品薄になった。

 「自然には逆らえない。でも、知識があれば、被害を最小限にできる」。台風被害後、肥料メーカーなどが開く勉強会に通い始めた。最新の肥料について学べば、不測の事態に対応する選択肢を広げられる。「気候は毎年違う。だからこの仕事は難しいし、やりがいがある」。気持ちを新たに、まもなく始まる今年の作付けを待つ。(筒井竜平)

 <プロフィル>

 くわばら・めぐみ 埼玉県出身。東京農工大学大学院を修了後、2011年にカルビーポテトに入社。全国最大の加工用ジャガイモの生産地である北海道・十勝地方で、生産管理を務める。

 ◇凄腕のひみつ

 ■病害虫対策、長靴に袋

 畑をまわってジャガイモの生育をチェックする仕事には、ポリ袋とバンドが欠かせない。病害虫を持ち込まないよう、長靴を覆う必要があるからだ。畑ごとに袋を替える徹底ぶりだ。

 ■自ら開墾、事務所に菜園

 北海道芽室町にある同社の事務所の敷地内には、3年ほど前に自ら「開墾」した広さ4畳ほどの菜園がある。そこで仕事の合間にトマトやニンジン、ネギなどを栽培している。もちろん、ジャガイモもつくる。実際に農作物を育てる経験は普段の仕事に生きるうえ、農家と会話する材料にもなる。収穫した作物は、同僚にプレゼントしている。

 ■情報・ご意見はファクス(03・5541・8428)またはメールで(t-rodo@asahi.comメールする

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 凄腕(スゴウデ)つとめにん

 <訂正して、おわびします>

 ▼16日付「凄腕つとめにん」の見出しと本文で、栽培に関わるジャガイモをポテトチップスに換算した場合、「4万5千袋分」とあるのは「4500万袋分」の誤りでした。確認が不十分でした。

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