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 防衛省が「存在しない」としてきた陸上自衛隊のイラク派遣時の日報が初めて開示された。活動終了から10年以上たって、自衛隊の海外派遣の検証に不可欠な公文書が、ようやく国民の目に明らかになった。

 公開されたのは2004~06年の435日分、計1万4929ページ。ただ、これでも派遣期間全体の45%にとどまる。残された日報は本当にこれだけか。徹底的な調査が必要だ。

 日報は自衛隊が宿営したサマワ市内での「銃撃戦」に触れ、英軍が武装勢力に襲われて「戦闘が拡大」との記述や、陸自の車列が爆弾で被害を受けた様子などが記されていた。

 当時の小泉首相はじめ、政府は自衛隊の活動範囲を「非戦闘地域」と説明してきたが、実態との乖離(かいり)は明らかだ。やはり日報の扱いが問題となった南スーダンPKOと同じ構図である。

 小野寺防衛相は「イラク復興支援特別措置法に基づいて活動したという認識に変わりない」と述べた。政府は「戦闘行為」を「国または国に準ずる者による組織的、計画的な攻撃」としており、日報にあるような状況は「戦闘」には当たらないというわけだが、納得できる説明ではない。

 イラクから帰国後、在職中に自殺した隊員は15年時点で29人が認定された。過酷な任務だったことがうかがえる。

 今回の日報公開を機に、政府から独立した機関を設け、陸自初の「戦地」派遣の全容、とりわけ「非戦闘地域」の実態を検証すべきだ。

 イラク派遣を決めた小泉政権の政策決定も俎上(そじょう)に載せなければならない。米政府高官の「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」(地上部隊の派遣を)という要請を受け、対米支援という結論ありきで特措法を制定。海外での武力行使を禁じる憲法との間でつじつまを合わせるため、ひねり出したのが「非戦闘地域」の概念ではなかったか。

 政府の説明と矛盾する公文書は「封印」したいという空気が防衛省・自衛隊にあったとすれば、国民や歴史に対する背信に他ならない。

 公文書が伏せられ、過去の検証もないまま、安倍政権は集団的自衛権の行使に道を開く安全保障関連法を強引に成立させた。「非戦闘地域」の概念すら取り払われ、自衛隊にはより危険な任務が想定されている。

 イラク派遣を含め、これまでの自衛隊の海外活動を丁寧に検証し、その教訓の上に安保法を見直す。それこそ、いま政治に求められる責任である。

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