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 安倍政権の下で、権力相互の抑制と均衡が失われている。

 そんな声がしきりだ。森友問題はその象徴といえる。公文書が改ざんされてしまっては、国会が政府の行いをチェックすることなど、およそできない。

 もう一つの権力である司法と立法・行政の関係はどうか。

 双方が最も神経をとがらせるテーマに一票の格差の問題がある。最高裁が「いまの議員定数配分は法の下の平等に反する」と判断すれば、首相の衆院解散権は事実上制約される。国会がつくる法律や、内閣が進める政策の正統性もゆらぐ。

 そんな緊張関係の中で、司法の指摘を踏まえ、政治の側はまがりなりにも格差の是正にとり組んできた。近年の定数訴訟にかかわった千葉勝美(かつみ)・元最高裁判事は、判決の個別意見で「実効性のあるキャッチボールが続いている」と評した。

 だが、それは幻想ではないかと思わせる動きが進む。

 自民党の改憲案のことだ。当初、参院の合区解消が目的だと言っていたのに、衆院についても格差の維持・拡大を容認する条文案を取りまとめた。

 キャッチボールはもうやめにしたい。今後、裁判所が口出しできないように、憲法そのものを変えてしまおう――。そう宣言したのに等しい。

 そこにあるのは、長年積み上げてきた議論を無視し、自分たちの都合だけで事を進めようとする政権党の身勝手さだ。

 三権のあるべき姿が省みられず、憲法の原則がないがしろにされた例は他にもある。

 最高裁は5年前、婚外子の法定相続分を嫡出(ちゃくしゅつ)子の半分とする当時の民法の定めを、違憲と断じた。この条文をめぐっては、95年以降の判決や決定で、結論は合憲としつつも、多くの判事が改正の必要を説く個別意見を表明してきた。しかし内閣、国会とも放置して差別を続け、国際社会からも非難された。

 いまとり組むべきは、権力分立を実のあるものとし、民主主義に改めて命を吹きこむことだ。これまでを反省し、責任を引き受ける覚悟が求められる点では、司法も例外ではない。

 判決で立法や行政のおかしさを指摘しても、相手が対応しなければ、かえって自らの権威が傷つく。そんなふうに考え、踏みこんだ判断を避けてこなかったか。投票で選ばれる議員らに比べて国民との結びつきが弱いのを口実に、厳しく難しい問題から逃げたことはないか。

 憲法がうたう国のありようと現実との溝を埋める作業に、不断にとり組まねばならない。

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