[PR]

 フェイクニュースに対しては、その拡散を防ぎ、だまされないための取り組みが必要です。事実を確認し、フェイクニュースを特定する「ファクトチェック」。そして、情報の受け手の判断能力を養成する「リテラシー教育」。それぞれの現状はどうなっているでしょうか。

 

 ■情報選択、自らの基準で

 朝日新聞デジタルのアンケートに寄せられた意見の一部を紹介します。

     ◇

 ●「時間はかかりますが、教育しかないと思います。私は大学に入ってから演習などを通じて確かな情報とか論拠とはどういうものかを学ぶ機会がありましたが、高校までの勉強ではなかなかそこまで丁寧にやる時間はありませんでした。昔のことなので情報の量といっても今の子たちが触れる『情報』の量とは比較にならないのでまだ良かったですが、今の子たちには情報リテラシーをきちんと学んでもらうことがとても大事だと思います。それまでに世界がおかしくならないようになんとか持ちこたえさせるのは大人たちの責務かと思いますが……正直、不安です」(東京都・50代女性)

 ●「AI技術を適用したテキストデータ分析により、フェイク情報と対応するファクト情報も自動的に表示するような機能を情報サイトが持てないだろうか」(東京都・50代男性)

 ●「良心あるメディアの側はできる限り多方面からの情報提供を心がけるべきだが、それでもフェイクや誤報は紛れ込む。利用者側は自ら問題意識・批判眼を持ち判断能力を研ぎ澄ます意識をもつべき。そのためには『深く考えることを放棄し続ければメディアを操る権力者の思惑に流され、手遅れになってから“こんなはずじゃなかった”と嘆くハメになる』との危機意識を育てるところから始め、物事を自分なりの判断基準で捉える訓練をする必要がある。その訓練の大切さを説くのも、メディアの役割のひとつだと思う」(神奈川県・50代その他)

 ●「フェイクニュースだけでなく、マスコミの報道についても見る角度により伝え方により、真実は異なってくると思う。目に入りやすい、耳に入りやすいニュースが真実であると思い込みやすいが、そうでないことも多い。様々な情報ソースにアンテナを張り、自分で情報を選択する意識を持つべきだと思う」(神奈川県・30代女性)

 ●「専門家、教授、新聞、テレビの言うことをうのみにしない。自分に都合のよい意見に飛びつかない。肯定意見、否定意見に対し思考停止せず、賛成反対を論理的に考える。様々な意見を収集するアンテナを持つ。上記は一例だが、こういったことを啓蒙(けいもう)していく」(埼玉県・40代男性)

 ●「フェイクニュースにはどこかに嘘(うそ)っぽさがある。情報の出典がはっきりしない、大げさな言葉を使う、『○○大学教授によると』と書いてあるが聞いたことのない大学名である、など。もちろんそれだけで全て防げるわけではないが、拡散しないようにする方法の一端にはなりうると思う」(奈良県・10代女性)

 ●「記事の内容で、事実の根拠を明示して記事にすること、記者や媒体の意見や願望は事実と区別して記載すること、物事の多面性を緻密(ちみつ)に報道する長い記事を支持すること、op―edのように社論とは違う意見を積極的に採用し多様な議論の場を形成すること、メディア間のチェック機能を強化すること、間違いを素直に認め訂正するメディアを読者が支持すること、自分の意見と違うものを大切にすること。知ったかぶりをしないこと」(東京都・50代男性)

 

 ■決めつけず、視野広げて 白鴎大学客員教授・下村健一さん

 これまで情報を伝える側のTBSキャスター、そして東日本大震災の時には取材を受ける側の内閣広報室審議官を務めた経験から、メディアリテラシーの必要性や実践方法について、何冊かの本を書いてきました。

 ただメディアリテラシーといっても、ピンとくる人は少なかった。でも最近は、「フェイクニュースの感染を防ぐワクチンですよ」と説明すると、「それは大事だ」とすぐ理解してもらえます。

 フェイクニュースは昔からあるけれど、今は感染力が全然違います。

 2015年から、光村図書の小学5年生の国語の教科書に、「想像力のスイッチを入れよう」という私の書き下ろしが掲載されています。メディアの情報を受けとめるための、想像力の働かせ方、つまりメディアリテラシーについて説明したものです。

 これをきっかけに、全国の学校や市民講座、企業研修などに呼ばれ、年間50~60回、メディアリテラシーについて授業や講演をしています。

 これだけスマートフォンやソーシャルメディアが広がる中で、子どもたちからそれを取り上げるのではなく、きちんと主体的な使いこなし方を覚えてもらう必要があります。

 「想像力のスイッチを入れよう」では、それを四つのポイントにまとめました。「まだわからないよね?」「事実かな、意見・印象かな?」「他の見え方もないかな?」「隠れているものはないかな?」

 特に「まだわからない」という、結論を決めつけない姿勢は大切です。

 「メディアはウソつきだから疑え」という行き過ぎた誤解。政府の言葉は全部批判する、というマスコミの姿勢。どちらも全否定の決めつけで、何でもうのみにしてしまうことと、同じ穴のムジナです。

 そうではなくて、視野を広げて物事を見ていくことです。

 自動車社会では事故を起こさないためにまず教習所に通います。ネット社会の安全運転も同じこと。子どもだけでなく、先生も保護者も、年代を問わず、今こそメディアリテラシー教育が必要だと思っています。

 ■専門家の真偽検証、重要 スマートニュース執行役員・藤村厚夫さん

 昨年6月に、様々な分野の専門家、研究者らとともにファクトチェックの普及・連携組織「ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)」を立ち上げました。

 その後、複数のメディアが参加して、同年10月に行われた総選挙についてのファクトチェック・プロジェクトを実施しています。

 ファクトチェックの作業では、各分野の専門知識がある人々が事実に基づいて検証し、情報の真偽を判断します。その前段階として、ソーシャルメディアなどの膨大な情報を収集し、それが疑わしいかどうか、ふるいにかける作業があります。

 その作業量は膨大で、「疑わしい」として真偽の判断に回されるのは、千件のうち数件という割合です。そこで、FIJの理事でもある東北大学の乾健太郎教授の研究室と共同で、人工知能(AI)を活用するための取り組みを続けています。

 AIを使って情報のチェックをする作業は、我々が提供しているスマートフォン用ニュースアプリ「スマートニュース」でも、特にユーザー投稿を掲載するメディアを中心に実施しています。

 ただ、AIのチェックには、まだ限界もあります。人間ならば直感的に「おかしい」と思えるような情報でも、AIは見逃してしまうことがある。また、写真に手の込んだ加工が施されているような場合も、検知は難しくなります。そこで、AIのチェックを前提に、最終的には人間が情報の正確性を判断しています。

 FIJの取り組みでも、収集した情報をふるいにかける段階で、過去の事例を学習したAIが、「疑わしさ」の度合いを見積もります。それを参考に人間が仕分けの判断をすることになります。

 一方で、ファクトチェックをすり抜けようとする人々も、やはりAIを活用します。本物と見分けのつかない、偽造動画も登場しています。そうなると、AI対AIのいたちごっこの場面も出てくる。

 やはり頼りになるのは、「これはおかしい」と思う、人間の判断力です。特に各分野で専門性が高い人たちが、どれだけ多くファクトチェックに関わってくれるかが、重要です。日本ではまだその数は多くないし、組織化もされていません。そのような活動の広がりが、これからの課題だと思っています。

 

 ◇アンケートでは、フェイクニュースへの対処法として、「リテラシー教育」と「ファクトチェック」で半数以上を占めました。これだけ大量の情報があふれる中で、社会としての自衛の必要性を、多くのみなさんが切実に感じています。一人ひとりのそんな意識の広がりが、フェイクニュース対策の第一歩になりそうです。(平和博)

 ◇来週29日は「広がるフェイクニュース:5」を掲載します。

 ◇アンケート「フェイクニュース、どう対処」を24日までhttp://t.asahi.com/forum別ウインドウで開きますで実施中です。ご意見はasahi_forum@asahi.comメールするでも募集しています。

こんなニュースも